弁護士・日本労働弁護団常任幹事
筆者がワークルール教育を広げる起爆剤と考えるのが、ワークルール教育推進法の制定だ。ワークルール教育の基本理念と施策の基本事項を定め、国や地方公共団体などの責務を明らかにする立法である。
前回、既に行われているさまざまな学校でのワークルール教育の実施例や実施に向けた外部講師派遣の相談窓口などを紹介した。とはいえ、全国津々浦々、全ての子どもたちにワークルール教育を実施すべきとすれば、現状のワークルール教育の広がりは不十分だし、実現にはいくつかの課題もある。
前回、教員の負担軽減の文脈で、日本労働弁護団や弁護士会、自治体の外部講師の派遣制度を活用したワークルール教育の実施に言及した。現在も、さまざまな団体の努力により、全国各地の学校でワークルール教育は実施されている。
前回は、学校でワークルール教育を行うことが「教員の新たな業務を増やすのではないか」という視点を指摘して終わった。教員の業務削減が叫ばれる中で、働き方改革に逆行するというのは重要な指摘だ。
筆者の所属する日本労働弁護団は、高校や大学で私のような労働弁護士によるワークルール教育の出前授業(講師派遣)を行っている。そこで、生徒や学生たちよりも熱心に話を聞いてくれたのが教員であったというのは、よくあることだ。
本連載はここまで、主に「ブラック企業」や「ブラックバイト」に対する労働者の被害予防や権利救済という視点で、ワークルール教育について説明してきた。しかし、こうした視点に対し、「労働者側に偏っているのでは?」と指摘を受けることもある。
ワークルール教育が生かされるのは、子どもたちが社会に出てからだけではない。ワークルール教育は、子どもたちの学校在学中から、すぐに役立つ教育なのだ。
学校でワークルール教育が行われることは重要だが、内容によっては悪影響ではないかという危惧もある。それは、職場の労働者の義務や職場秩序ばかりを過度に強調するワークルール教育が行われることだ。
私のような弁護士(法律家)がワークルール教育の重要性を指摘すると、労働法の知識を教えるものとイメージされがちだ。しかし、私が考えるワークルール教育の内容は少し違う。
筆者は20年弱、「労働弁護士」として活動してきた。その中で、労働者の死亡事案含め、深刻な被害が生じた労働事件を数多く担当してきた。その中で、労働者の死亡事案含め、深刻な被害が生じた労働事件を数多く担当してきた。
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