在留外国人の増加を背景に、文部科学省は9月5日、「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」の改定を閣議決定した。改定後の基本方針では、外国につながる子どもへの日本語指導の体制強化に向け、「特別の教育課程」の制度や登録日本語教員の活用を推進。将来を見通した進路指導が行われるよう、就学促進やキャリア教育に関する支援策も盛り込んだ。
基本方針は2019年6月施行の日本語教育の推進に関する法律に基づき、翌年6月に策定。おおむね5年ごとの見直しを行うとしており、改定は今回が初めて。改定に当たっては、在留外国人の増加に伴い日本語学習者が急増、出身国や母語は多様化している現状を踏まえ、外国人の孤立防止や日本社会での共生に向け、日本語習得環境の整備や教育の充実に関する取り組みを打ち出している。
改定後の基本方針では、外国につながる子どもへの指導・支援体制を強化。日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の制度活用を推進、一人一人に応じた学習・指導計画を立てるためのアセスメントツールの普及を図る。
日本語指導に当たっては登録日本語教員をはじめ、日本語指導補助者、母語支援員といった人材を活用する。指導体制の充実に向け、登録日本語教員の資格を持つ教員の採用・登用を促すとともに、教員免許と登録日本語教員の両方の資格取得を目指す養成課程の設置も促進する。
また改定に際し、義務教育段階の年齢で小中学校などに通っていない「不就学」の問題についても言及。文科省の調査では外国人児童生徒のうち、23年5月時点で約8600人が不就学とされている。そのため改定後の基本方針では、住民基本台帳部局をはじめ行政機関が地域のNPOなどと連携、情報提供や発信、就学促進の取り組みを推進するとした。
さらに将来を見通した進路指導が提供されるよう、キャリア教育の包括的な支援を行うほか、高校入試で帰国・外国人生徒などの特別定員枠を設定するなどの配慮も促すとしている。
出入国在留管理庁によれば、日本で暮らす在留外国人は24年度末時点で約376万9000人に上り、3年連続で過去最多を更新している状況だ。今回の基本方針の改定を受け、阿部俊子文科相は5日の閣議後会見で「日本語教育の重要性は一層高まっている。関係省庁と連携をし、引き続き日本語教育の推進に取り組んでまいりたい」と力を込めた。