学校の非正規公務員で細切れ雇用 アンケートで浮き彫り

学校の非正規公務員で細切れ雇用 アンケートで浮き彫り
記者会見する「なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会」のメンバー=撮影:藤井孝良
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 非正規公務員の労働問題に取り組んでいる「なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会」は9月9日、厚労省で記者会見を開き、実行委員会の構成団体の一つである公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)が行った、会計年度任用職員などの非正規公務員へのアンケート結果を公表した。アンケートには学校司書をはじめとする学校で働く非正規公務員からも多数の回答が寄せられ、学期ごとに細切れで雇用するような実態が浮き彫りとなった。はむねっとでは、こうした空白期間が生じる任用は解消すべきだとしている。

 アンケートは今年5月19日~6月22日にインターネットで実施。アンケートは2021年から毎年実施しており、今回で5回目となる。国の機関や自治体で働いている非正規公務員や、自治体が派遣や業務委託、指定管理者など外部委託した職場で働いている人、23年4月~25年3月までの間、これらの非正規公務員として働いていた人を対象とし、480件の有効回答を得た。回答した94%が女性で、91%が現職だった。

 具体的な職種を尋ねると、▽学校司書 30%▽図書館職員 24%▽一般事務職員(学校事務を含む) 12%――をはじめ、教員・講師・助手・外国語指導助手(ALT)など(4%)、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー(2%)、ICT支援員や教員業務支援員などの教員支援職員(1%)といった、学校で働く職種からの回答も多数あった。

 今回新たに、担っている職務を複数回答で尋ねたところ、「正規職員に仕事を教えている」(127件)や「決裁書を起案している」(118件)、「物品の購入や支払いを担当している」(102件)、「人材育成を行っている」(94件)など、正規職員と同等の業務に従事していることも珍しくない実態が浮かび上がった。

 一方で、年収は250万円未満が6割を占め、フルタイムの会計年度任用職員でも6割が300万円未満で、経済的に厳しい状況にある人も多くいることが伺える。将来について「いつも不安」と感じている人は42%を占め、「時々感じる」や「一定の時期に感じる」を含めると94%の人が不安を抱いていた。

 会計年度任用職員などの非正規公務員について、問題だと感じることを上位3つまで選んでもらうと、「雇用が不安定(有期雇用である)」(292件)や「正規登用の道がない(「専門職は非正規採用しかない」を含む)」(193件)、「給与が低い」(163件)、「やりがい搾取(悪い労働条件のもとで、やりがいを利用して働かせること)」(163件)などが多く挙がった。

 自由記述では「学期ごとの契約で非常に不安定な雇用。毎年毎年、履歴書を書き、面接で同じような質問をされるのは、採用する側、される側にとって、時間と労力の無駄だと思う。選考結果が郵便で自宅に届いて開封する時が、とても不安で怖い。毎年こんな事が続くのかと思うとつらい」(日本語指導員)や「社会保険に加入させてもらえないため、自分で国民年金を払わざるを得ない。別の職種で残って欲しいと言われたが、給料も有休も賞与もリセットされて未経験の新規採用と同じ扱いにされるため納得できない」(教員支援職員)、「配偶者がいて自分以外の収入があるからやっていられる職業だと思う。実際独身の若手はすぐに離職してしまう。後継者が育たない。経験や知識が必要な職なのに5年で公募。勤務時間は短く、サービス残業が当たり前。これでは先がない」(学校司書)などの声が寄せられた。

 はむねっと共同代表の瀬山紀子さんは「正規職員に仕事を教えたり、決裁書の起案をしたりといった非常に重要な職務を、単年度任用の位置付けに置かれた人たちが担っているというのは矛盾した状態だ。学校では学期ごとに細切れの雇用が行われている実態が見えてきた。そうしたことがまだ各地の自治体で行われている」と指摘。同一労働同一賃金を前提にした制度に改めることや、学期ごとに雇用するなどの空白期間が生じる任用の解消を求めた。

 

【キーワード】

会計年度任用職員 改正地方公務員法によって2020年に制度化された非常勤の公務員。任用期間は1年以内で、それ以上の任用になる場合は再任用の手続きをしなければならない。学校司書やスクールカウンセラーなど、学校に関わる職種でも会計年度任用職員となっているケースは少なくない。

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