2021年度の不登校の児童生徒数は、前年度の19万6127人から急増し24万4940人となった。児童生徒数1000人当たりでみると小学校13・0人、中学校50・0人で中学校における不登校の割合が高いことが分かる。不登校の児童生徒については、通学して学習することを基本とするものの、現在では通学の有無に関わらず社会的自立に向けた学習の支援を進める考え方が取られている。
不登校児童生徒の増加に対応して、文科省は今年3月、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめ教育委員会などに通知した。内容は、環境整備として、(1)不登校特例校の設置促進(2)校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置促進(3)教育支援センターの支援機能の強化(4)教室外の学習等の成果の適切な評価(5)柔軟な学級替えや転校等の対応――などを示した。これら以外に、心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する取り組みや、学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にすることが示された。
不登校児童生徒の支援については、これまでも19年に「不登校児童生徒への支援の在り方について」が示され、対策が進められてきたが、今回は文科省に「不登校対策推進本部」を設置し、推進状況の管理と取り組みの不断の改善を図るとしている。
これまでも、義務教育段階の不登校児童生徒の指導要録の出欠の扱いについては、一定の条件で学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合は、出席扱いすることができるとされていた。また、自宅においてICTなどを活用した学習活動についても要件を満たせば校長の判断で出席扱いにして評価に反映できることとされてきた。
「COCOLOプラン」の環境整備の第1に挙げられたのが不登校特例校(「学びの多様化学校」に23年8月・名称変更)の設置促進である。不登校特例校は、23年3月現在21校が設置されているが、今後は全ての都道府県・政令市への設置を目指し、将来は分散教室を含めて全国で300校の設置を目指すとしている。
不登校特例校とは、学校教育法施行規則第56条に基づき、文科大臣の指定を受けて、不登校児童生徒を対象とした特別の教育課程の編成を可能とする学校のことである。
例えば04年に開校した東京都八王子市立高尾山学園(小4~中3の小中一貫教育)では、小学校第6学年の授業時数は、道徳、学級活動、総合的な学習の時間を除いて各教科の時数を減じ、全体として754時間(標準は1015時間)を配当している。授業日数は201日である。
21年度に開校した岐阜市立草潤中学校では、各学年とも770時間(標準時数は1015時間)を配当し、音楽、美術、技術・家庭については、生徒自身が興味・関心に応じて学ぶ形となっている。また、生徒は3つの学びのモデル((1)家庭学習基本(2)家庭学習+週に数日登校(3)毎日登校)を選択して学習できることとされている。始業時刻は9時30分で共通であるが、終業時刻は、(1)は15時~15時15分、(2)と(3)は14時35分とされている。
教育基本法は、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」(第4条)と定めている。登校、不登校の有無にかかわらず、全ての児童生徒に学習の機会を保障する取り組みの充実が求められている。