新年度になれば、各自治体から教員採用試験の募集要項が発表される。そして、試験のエントリーということになるわけだが、エントリーシートには自己PR的な内容を記すことが少なくない。面接の質問などもその自己PRに基づいて行われる。自己分析と自己PRに焦点を当ててみる。
教採試験ではなぜ面接を行うのか。それは採用する自治体が受験者・教員志望者のことをよく知りたいからである。従って受験者は誤解が生じないよう上手に自分をPRする必要がある。
採用側が知りたいのは、教員に向いているかどうかを判断する受験者の人間性である。学生生活において何があったかという事実だけではなく、そのとき何をどう考え、どう行動したか、人間性につながる内容を聞きたいのであるから、採用側が聞きたいと思われることを聞かせてあげればよい。
準備では、自己分析をしてそれをもとに自己PRを考えることが重要である。エントリーに当たっては、自己PR文や自己推薦書の提出が求められることもある。実際の面接では自己PRの時間が設定されているケースも多い。面接は自己PRの場と心得、しっかりとそのための自己分析をしなくてはならない。
自己PRと言っても、ただ「こういう性格です」「こういう特徴があります」と抽象的に述べても仕方がない。自己の体験、経験を整理して、説得力のある内容にすることが求められる。人柄などに関連する自分の具体的な体験を挙げ、どのような体験のどのようなところから自分の考え方が生じてきたのか、を示すと面接官にも分かりやすい内容となる。
人間には誰でも長所があり、短所もある。また、長所と思っていたことが、短所になることがあり、その逆もある。異なる条件の下では、同じ特質が長所にも短所にもある。分析の際は、まず中立のものとして、自分の特質を分析するとよい。
自己PRを考える際は、頑張ったことをリストアップしよう。次の10項目について書き出すようにする。
〈頑張ったことリスト・10項目〉
(1)学業や勉強、ゼミで頑張ったこと
(2)スポーツで頑張ったこと
(3)部活動やサークル活動で頑張ったこと
(4)アルバイトで頑張ったこと
(5)資格取得
(6)語学、留学
(7)趣味、特技
(8)教育実習
(9)勤務で頑張ったこと(社会人経験者)
(10)教員の臨時採用で頑張ったこと
エントリーシートには、これらのように学業や部活動など学生時代に力を注いだこと、教育実習で学んだことなどを書かせることが多い。
教採試験向けに、自己を分析するためのポイントを考えると次のようになる。
▽自分はどのような性格の特徴を持っているか
▽学生時代に力を注いだ学科、科目、分野は(サークル活動、資格取得なども)
▽アルバイト、ボランティア、留学などで学んだことは(印象に残る体験は)
▽感銘を受けた本、映画、芸術作品などは
▽理想とする教員像は
▽現在、最も関心のあることは
▽SNS(ツィッター、インスタグラムなど)でどのような発信をしているか
▽教育実習、学校ボランティアで学んだことは(印象に残ったことは)
※臨採経験者=教職の臨時採用で学んだことは
※社会人経験者=勤務経験で学んだことは
▽教職に対する自分のセールス・ポイントは
話し方においても触れておこう。「自己PRをしてください」と言われたら、次の3段構成で話しを組み立てること。
・導入部=要旨を簡単に述べる
・主題=具体的にエピソードを交えて話す
・結び=自分の意見や決意でまとめる
これを自分の言葉で表現し、3~5分程度でまとめることだ。そして、表情豊かに熱意と自信をもって、堂々と話すことが大事である。また、「表現が的確で、主張が分かりやすい」「冷静で説得力のある展開」「明快な結論」などがポイントとなる。
上がらないための工夫としては、「話し始めは、少し低めの声で話す」「話し始めたら、ゆっくりと、丁寧に、歯切れよく話す」などを心掛けるとよい。
また、話した内容はよく覚えておくことが大切だ。1次面接で話したことを2次面接でさらに聞かれることがあるので、矛盾のないようにしたい。
早いところでは4月の上旬から出願受付が始まる。いまから自己PRについてはしっかり分析し、整理していくことが求められる。
▽身体的能力=健康であるか。体力、視力、聴力、スポーツ的な技能力などの身体的能力はあるか。病気や障害の有無。
▽性格=協調性、積極性、勤勉性、実直性、誠実性、忍耐力、情緒安定性などを備えているか。
▽能力=語学力、IT活用能力、事務的能力、文章能力など具体的なもののほか、計画性、表現力、理解力、コミュニケーション能力などを備えているか。