【教育課程を学ぼう(13)学校段階間の接続

【教育課程を学ぼう(13)学校段階間の接続
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 国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授 工藤文三
この連載の一覧

 幼児・児童・生徒が、一定の期間学校に在籍し、次の学校に進学していく制度を前提にすると、学校段階間で学習や生活をどのように円滑に接続していくかが課題になる。

幼稚園と小学校の接続

 幼稚園については、2017年の改訂の際に、幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿が幼稚園教育要領で明確にされ、幼児指導要録の最終年度ではこれらの姿を生かした記載がなされることになった。幼稚園においては、狙いおよび内容に基づく活動を進める際には、これらの幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を考慮することが大切である。小学校については、低学年における教育が重要な意味を持つ。低学年においては、幼稚園教育要領に示す幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮するとともに、できるだけ児童の生活とのつながりができるよう教科等間の関連を図った学習を進める。特に、入学当初においては、幼児期が遊びを通じた生活であったことを踏まえ、生活科を中心とした合科的・関連的指導や弾力的な時間割を設定するなどの工夫を行う。幼稚園および小学校の教師が研修会などを通じて、双方の教育課程の特色、幼児・児童の活動の特色などの相互理解を進め、それを指導計画および平素の指導や評価に生かすようにする。

小学校と中学校の接続

 小学校では学級担任が学級を基盤に各教科などの指導を行うのに対して、中学校では教科担任によるより専門的な指導が行われる。教科の中には分野によって構成されるなど内容も徐々に高度になる。円滑な接続を図るためには、小学校、中学校とも9年間の義務教育を見通した資質・能力を育むことを明確にする。そのためには、各教科などの指導計画を作成する際に、目標や内容の9年間の系統や関連を踏まえるようにする。また、小学校高学年において中学校との関連を、中学校1学年においては小学校高学年との関連を、それぞれ指導計画に示すことも有効である。さらに、小学校の卒業に際しては、小学校段階で求められている学習をできるだけ確かなものにすること、中学校の入学時には小学校までの学習状況を把握し、結果を指導計画に生かすようにする。

中学校と高校との接続

 高校は、入学者選抜によって入学する生徒で構成され、また学科や課程によって教育課程にも特色がある。中学校においては、卒業までに義務教育段階の終わりまでに身に付けるべき資質・能力を確実に修得させることである。必要に応じて、少人数指導、習熟の程度に応じた指導、補充指導などを行い、中学校段階で求められる学習を確かなものにしておく。高等学校学習指導要領では、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図る工夫が3点示されている。(1)各教科・科目の指導について、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設ける(2)必履修教科・科目の単位数を標準単位数の標準の限度を超えて増加し、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図る(3)義務教育段階での学習内容の確実な定着を図ることを狙いにした学校設定科目等を履修させた後に、必履修教科・科目を履修させるようにする――の3点である。これらを実施する際には、入学時の生徒の学習状況を診断することが必要である。

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