3月になり、教採試験の本番がいよいよ近づいてきた。面接試験で最も受験者の苦手意識が強い集団討論については、ここで集中的に練習に取り組んで対応のポイントをつかんでおきたいものである。1人では練習できないので、受験生仲間と練習を繰り返し積んでおこう。
一次の筆記試験には合格するが、面接などを中心とする二次試験で落ちてしまうという受験者が少なからずいる。重要なのは、面接でも得点の配分が高いとされる、集団討論だ。
まず、集団で行われる面接として、集団面接と集団討論の違いを確認しておこう。一般的な実施形態は次の通りである。集団面接は5~7人くらいの受験生に2~3人の面接官が対応し、20~40分程度で行われる。面接官が質問し、受験生が一人ずつ並んでいる順、もしくは指名順に答える。基本的に個人面接と大きな違いはない。ただし、時間が個人面接より長いことが多いので、その分、長く観察されているということになる。緊張感は個人より少ないが、他の受験者との比較もされているのだ。
一方、集団討論は、5~10人くらいの受験生が、車座あるいはアーチ状に着席する。面接官は2~5人が対応。時間は20~60分程度。通常、冒頭に自己紹介があり、その後、討論のテーマが発表される。5~10分程度自分の考えをまとめる時間が与えられてから、討論がスタートする。討論の司会進行は、面接官が務める場合と受験生に任せる場合とがある。まったく自由に討論させるケースも見られるし、集団面接に続いて討論をさせることもある。
教員として採用後、十分にその職責を果たせるかどうか、討論という社会的場面における言動を通して、その資質を判断することが狙いだ。判断力、協調性、表現力など教員として欠かすことのできない素養がチェックされる。
討論のスタイルは、主に3分類できる。まずは、討論スタイル。「部活動を地域移行することについて」「教員採用選考の早期化」など是非を問うテーマで、自分の意見を主張する。
次に、協議スタイル。「いじめ、不登校対策として家庭とどのように連携するか」などのテーマについて、解決策、対策などを話し合う。
3つ目は座談会スタイル。「豊かな心を育むには」「環境教育の推進について」などのテーマについて自由に意見を述べ合う。
集団討論は一つの課題、テーマについて、各自で課題の構造をしっかり把握し分析することが短い時間で求められる。それぞれの意見、経験、知識などを出し合い、討論の中で課題の焦点化、課題の深化、課題解決の対策、解決策のまとめ、次の課題への転換、収束への転換へと論を進めていかなくてはならない。かなりの知的共同作業といえる。また、面接官はこの過程を通し、一人一人を比較し評価していく。
こうした中で自分の意見を主張し、他の受験者より「目立つ」必要があるのである。これに対応するには、事前の入念な練習が必須となる。
集団討論の練習の仕方は次の通り。練習を繰り返して討論に慣れておこう。
▽少なくても5~6人で練習する。
▽採点官役を2人くらい決める。採点官役がテーマを決め、発表する。
▽5分程度でテーマに対する考えを各自でまとめる。
▽討論しやすいように内側を向いて並んで座る。
▽参加者それぞれが2~3分程度で、テーマに対する自分の考えを述べる。
▽発言は、できるだけ大きな声で行うようにする。
▽全員の発表が終わったら、30~40分程度の時間で討論を行う。課題解決型の討論を心掛ける。
▽採点官役は、発言を注意深く観察し評価を行う。
▽終了後、互いの発言内容、態度などについて率直に意見を交わし、今後に生かすようにする。
練習の際にぜひ意識して取り組んでもらいたいことは、次の3点。
まずは、「最初のひと声」。いわゆる討論開始の皮切りである。「では、討論を始めてください」といわれると、通常、一瞬間が空くものである。他の出方をうかがう、という雰囲気もある。そこで、あえて第一声を発するように心掛けて練習しよう。一度発言してしまえば、その後もスムーズに発言できるし、積極性は評価される。普段、消極的な人は特に心掛けるといいだろう。
次は、「他人の意見を聞く」。人の意見を聞かずに、自分の意見を主張するばかりでは、マイナス評価だ。また、自分と意見が違ったから、反論されたからといって感情的に攻撃するのも印象がよくない。特に反論するときは、「私は、○○と思うのですが、いかがでしょうか」などソフトな質問形に変えるなどの工夫が求められる。
最後は、「目立ち方を工夫する」。目立たなくてはいけないのは確かである。ただ、「他の発言を中断させて発言する」「話の流れを強引に自分の趣意に導こうとする」「話を強引にまとめる」などの目立ち方は避けなければならない。
例えば、「テーマの本筋から討論が外れそうになったとき、さりげなく修正する発言をする」「討論に積極的に参加しながら、要所でまとめていく」などは評価される。練習時に留意したい点である。
他の受験生を意見で負かそうとするよりも、協力して討論を成功させることが重要だ。全員で合格を目指す意識が討論では必要になる。
グループ全員で討論を成功させて、全員で合格しようという気持ちが大切だ。練習のときからこの気持ちを持って取り組むことが望まれる。