【神谷正孝の教育時事2023(8)】次期教育振興基本計画のポイント(1)答申のポイント整理(1)~背景の理解

【神谷正孝の教育時事2023(8)】次期教育振興基本計画のポイント(1)答申のポイント整理(1)~背景の理解
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kei塾主任講師 神谷 正孝

 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。3月8日、中教審より「次期教育振興基本計画について(答申)」が出されました。今夏の試験では、理念や背景、具体的に示された方向性などが問われる可能性があります。また、論文などのテーマとしては、「ウェルビーイング」なども知っておくべき重要キーワードとなるでしょう。今回からは、答申の内容からポイントを解説するとともに、キーワードチェックを行っていきたいと思います。差し当たり今回は、背景事情や第3期計画の評価について整理します。

◇ ◇ ◇

教育振興基本計画とは

 教育振興基本計画は、教育基本法17条の規定により政府が策定する教育の振興についての計画です。2008年に第1期計画が策定され、13年には第2期計画が、18年には第3期計画が策定されました。このように5年に一度の中期計画で、数値目標やアウトカム指標が採用されており、政策の効果を測定できるようになっています。社会情勢など教育を取り巻く事情も踏まえ、子供の実情や、前期計画期間中の評価に基づく改善点などをもとに策定される計画は、上記答申では「羅針盤」と例えられました。国が策定する計画を参酌して地方公共団体においても計画が作られています(地方公共団体の計画策定は努力義務)。

 採用試験対策としては、筆記試験で出題される重要な資料であることはもちろん、昨今の教育事情を知るための手掛かりとして、また教育の目指す方向をつかむための基礎資料として重要です。

第3期計画期間中の課題と成果

 第3期計画期間中の課題については、およそ以下のようなことが述べられています。コロナ禍による体験活動の機会の減少、不登校の増加やいじめ重大事態の増加、学校における教師の働き方改革に関する課題、家庭や地域の教育力の低下、専門人材の不足や大学院博士課程進学者の減少など社会を支える人材についての課題などです。

 反対に、成果としては、国際的に見て高い教育水準の維持やGIGAスクール構想の推進、教職員定数の改善などが示されています。成果を踏まえつつ、課題として挙げられている内容について、見識を深めると共に、これらの課題解決のための具体的な方策について、その方向性を理解しておきましょう。

社会の現状や変化

 計画策定に当たり、もう一つ理解しておきたいのは、社会の現状や変化についてです。今回答申では、現在から将来の社会をVUCA(ブーカ、ブカ)の時代と位置付けています。VUCAは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性を意味する英単語の頭文字を組み合わせたものです。また、社会的包摂や精神的な豊かさとしての「ウェルビーイング」の概念が示されています。このウェルビーイングについては、日本発のウェルビーイングの発信についても触れられており、計画全体を理解する上で重要なキーワードとなります。

第4期計画の基本コンセプト

 以上を踏まえた時期教育振興基本計画の基本コンセプトは、別掲の通りですが、「持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」という視点は理解しておきましょう。ウェルビーイングについては、「身体的、精神的、社会定に良い状態にある」だけではなく、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念と捉えることが大切です。

◇ ◇ ◇

 次回は、日本発のウェルビーイングや、教育振興基本計画の具体的な方針について掘り下げたいと思います。

5分でわかる教育時事2023 第8回 問題編

1.次の文章は中央教育審議会「次期教育振興基本計画について(答申)」(2023(令和5)年3月)の一部である。文中の空欄に当てはまる語句を書きなさい。

Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望

(1)教育の普遍的な使命

○これら教育基本法の理念・目的・目標・機会均等の実現を目指すことは、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代においても変わることのない、立ち返るべき教育の「( 1 )」である。教育振興基本計画は、「( 1 )」を普遍的な使命としつつ、社会や時代の「流行」の中で、我が国の教育という大きな船の( 2 )となるものと言えよう。「流行」を取り入れてこそ「( 1 )」としての普遍的使命が果たされるものであり、( 1 )流行の元にある教育の本質的価値を実現するために、( 2 )の指し示す進むべき方向に向けて必要な教育政策を着実に実行していかなければならない。

2.次の文章は中央教育審議会「次期教育振興基本計画について(答申)」(令和5年3月)の一部である。空欄に当てはまる語句を語群から選びなさい。

Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望

(3)社会の現状や変化への対応と今後の展望

○現代は将来の予測が困難な時代であり、その特徴である変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字を取って「( 1 )」の時代とも言われている。これまでの3回にわたる計画の中で、少子化・人口減少や高齢化、グローバル化の進展と国際的な地位の低下、地球規模の課題、子供の貧困、格差の固定化と再生産、地域間格差、社会のつながりの希薄化などは、社会の課題として継続的に掲げられてきた。こうした中、第3期計画期間中に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響及びロシアのウクライナ侵略による国際情勢の不安定化は、正に予測困難な時代を象徴する事態であったと言えよう。このような危機に対応する強靭さ(( 2 ))を備えた社会をいかに構築していくかという観点はこれからの重要な課題である。

○新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響としては、国際経済の停滞、グローバルな人的交流の減少、体験活動の機会の減少などの事態が生じた。また、学校の臨時休業により、学校の居場所や( 3 )としての福祉的役割を再認識するきっかけとなった。感染拡大当初は ICT の活用が十分ではなく、デジタル化への対応の遅れが浮き彫りとなったが、これを契機として遠隔・オンライン教育が進展し、学びの変容がもたらされた。こうした社会状況もあいまって、デジタルトランスフォーメーション(( 4 ))の進展は社会により良い変化をもたらす可能性のある変革として注目されている。

○2040年以降の社会を見据えたとき、現時点で予測される社会の課題や変化に対応して人材を育成するという視点と、予測できない未来に向けて自らが社会を創り出していくという視点の双方が必要となる。

○予測できる社会の変化としてはまず、人口減少が挙げられ、現在の生産年齢人口である 15~64歳の人口は、2050年には現在の2/3に減少すると推計されている。我が国の労働生産性は国際的に見て低く、このままでは社会経済の活力や水準の維持が危ぶまれる状況にある。また、人口減少・高齢化は特に地方において深刻であり、地方創生の観点からの対応も必要である。加えて、長寿化が進展する中での対応も求められる。

○ デジタルトランスフォーメーションや地球温暖化と関連して、デジタル人材や( 5 )(脱炭素)人材が不足するとの予測がある。また、AIやロボットの発達により、特定の職種では雇用が減少し、今後は問題発見力や的確な予測、革新性といった能力が一層求められることが予測されており、労働市場の在り方や働く人に必要とされる( 6 )が今後変容していくことが見通される。

○経済先進諸国においては、( 7 )的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや( 8 )までを含めて幸福や生きがいを捉える「ウェルビーイング(Well-being)」の考え方が重視されてきており、経済協力開発機構(OECD)の「ラーニング・コンパス 2030(学びの羅針盤 2030)」では、個人と社会のウェルビーイングは「私たちの望む未来(Future We Want)」であり、社会のウェルビーイングは共通の「目的地」とされている。

○社会の多様化が進む中、障害の有無や年齢、文化的・言語的背景、家庭環境などにかかわらず、誰一人取り残すことなく、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる( 9 )の実現を目指し、その実現に向けた( 10 )を推進する必要がある。

語群 

ア SDGs   イ VUCA  ウ BRICs  エ リアクタンス  

オ レジリエンス  カ ストレングス キ セーフティネット  

ク 安全装置  ケ DT  コ DX  サ DEX    

シ カーボンオフセット  セ グリーン   ソ アビリティ

タ スキル  チ 物質  ツ 経済  テ 健康  ト 医療  ナ 福祉

ニ 共生社会 ヌ Society5.0 ネ 社会的包摂 ノ インクルーシブ教育

1 解答 1:不易  2:羅針盤

2 解答 1:イ(VUCA) 2:オ(レジリエンス) 3:キ(セーフティネット) 4:コ(DX) 5:セ(グリーン) 6:タ(スキル) 7:ツ(経済) 

8:テ(健康) 9:ニ(共生社会) 10:ネ(社会的包摂)

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