【教育課程を学ぼう(16)】見通しを立てたり振り返ったりする活動

【教育課程を学ぼう(16)】見通しを立てたり振り返ったりする活動
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 国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授 工藤文三
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見通しを立てたり振り返ったりする活動

 「見通しを立てたり振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫する」は、2008年の学習指導要領改訂に際して、総則の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に初めて記された事項である。その後、現行の学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の配慮事項として示された。

 この事項を示した背景について、08年改訂学習指導要領解説では、教育基本法第6条第2項において「自ら進んで学習に取り組む意欲を高める」ことが示され、学校教育法第30条第2項で「主体的に学習に取り組む態度を養う」ことが掲げられたことを踏まえたものとしている。また、続いて、OECD(経済協力開発機構)のPISA調査などの学力調査で学習の見通しを立てることが十分でないという状況についても記している。

 具体的には、各教科などの指導において、児童生徒が学習の見通しを立てたり、児童生徒が当該授業で学習した内容を振り返ったりする機会を設けること、家庭において学習の見通しを立てて予習をしたり、学習した内容を振り返って復習する機会を設けることが例示されている。

自己制御学習、自己調整学習、主体的に学習に取り組む態度の評価

 学習者自身が、学習の目標とそれを実現するための方法を設定し、学習の進捗(しんちょく)状況を自分自身で把握・制御し調整する学習は自己制御学習、または自己調整学習と呼ばれる。学習目標の設定と学習方法を計画する場面では、自分はこの方法だと目当てを達成できるのではないかと学習の見通しを立てることが行われる。

 実際の学習場面では、「この方法を使ったら問題が解けた」「何回か繰り返しているうちに解き方が分かってきた」などのように、自分の学習状況を把握し点検することが行われる。さらに、この把握と点検を前提に、「この方法では解けないので別の方法を探してみる」などのように、学習方法を模索したり試してみたりすることが行われる。学習の振り返りとは、このような児童生徒自身による学習状況の把握・点検や学習方法の模索や試行のことであり、メタ認知とも呼ばれる。

 見通しを立てたり振り返ったりする活動を、具体化するためには、例えば次のような視点を含めた学習帳やワークシートを用意し、自ら記入させながら教師がコメントすることが考えられる。

 (1)疑問と学習問題の設定(2)学習問題を解決するための手順や方法などの見通しと計画(3)学習の進行状況の振り返り(4)よりよい学習方法の模索とその経過の振り返り(5)学習結果のまとめと発表――などである。

 一方、見通しを立てたり振り返ったりする活動は、評価の観点「主体的に学習に取り組む態度」の評価に際しても重要な着眼点となる。この観点の評価について、16年の中教審答申では次のように述べていた。

 「子供たちが自ら学習の目標を持ち、進め方を見直しながら学習を進め、その過程を評価して新たな学習につなげるといった、学習に関する自己調整を行いながら、粘り強く知識・技能を獲得したり思考・判断・表現しようとしたりしているかどうかという、意思的な側面を捉えて評価することが求められる」

 このような評価を進めるためには、先に挙げたような学習帳やワークシートを用いるといった取り組みが有効である。

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