いよいよ採用試験本番である。論作文の直前対策として、試験に臨む際にこれだけは頭に入れておきたい、という事項をまとめておいた。
(1)事前の準備
論作文の出題の領域は、主に次の3つである。
(1)教育論=教育の目的・狙い。時事的な課題(働き方改革、令和の日本型学校教育など)、キーワード、答申に示された考え方。探究学習、観点別評価など学習指導要領関連の対応策。
(2)教師論=理想の教師像と求められる教師像。教師の役割、使命感、熱意、モラルなどに対する考え。
(3)児童生徒、学級経営=不登校、いじめなど問題行動に対する考え。学級経営、生徒指導への対応。児童生徒観。
これらに関する知識や情報を頭に入れ、それぞれに対する自己の考え方、対応策などを考えておこう。
(2)執筆の準備
■Bの鉛筆を持っていく
筆記用具として先の少し丸いBの鉛筆を1ケース用意しよう。太くはっきりとした字を書くためである。細い線できれいに字を書く人がいるが、これはNG。字を見てもらうのではない。論を見てもらうのだからである。小さい字、薄い字、弱々しい字なども好ましくない。また、消しゴムも複数持っていく。落とした時のための用意である。
(3)いざ執筆のために
■見た目をよくする
採点官に好ましく、気持ちよく読んでもらうためには、見た目をよくすることが求められる。次の4点を押さえて執筆しよう。
(1)1文を短く。
(2)1段落は、3~5行以内。
(3)箇条書きを適切に取り入れる。
(4)箇条書きの前後や大きな説明単位の前後では、1行の空白行をとる。
■レイアウトを考える
書き始める前に、論文の構成を考えする。
(1)論文の中心主張を述べる。
(2)その主張に沿った具体的活動内容を箇条書きで述べる。
(3)なぜその活動をするのかの理由を一つ一つ説明する。
(4)締めくくりの言葉を述べる。
次に、それぞれの文量を決める。例えば、次のようにである。
(1)は3行から4行。そして空白行を1行とり、(2)は3つ述べるとして、それぞれ2行ずつで合計6行をとり、その後にまた空白行を1行とる。(4)の締めくくりに2行をとる。
このように割り振りをすると、自動的に(3)の活動の理由のための文量が決まってくる。残った文量を3等分すればよい。これを最初にしておくと、書きやすくなるばかりでなく、文章の歯切れも、格段によくなる。
■「つなぎ」を考える
論文全体は、いくつかのブロックに分かれる。その間を「つなぐ」文を考えたい。最初の主張部分が終わるときに、「私は、この考えを実現するために、以下のような授業を行ってみたい」と次の具体的活動の箇条書きに「つなぐ」。その具体案の箇条書きが終わったら、「では、なぜこのような授業を展開するのか、以下それぞれその理由を述べる」と、次の説明へと「つなぐ」、という具合である。
(4)分かりやすい文章を考える
■「1行1事」を心掛ける
「1文1意」が、分かりやすい文章の大原則である。これを切りつめると、「1行1事」となる。1行で一つの文章を終わらせるということ。これは実は難しい。1文を1行で終わらせるに単文にすることである。複文を多用して難しくすることが、論文としてよいことだと思っている人がいるが、そうではない。
■短文・単文になるまで半分に割る
分かる文章にするには、短文・単文にしなくてはならない。短文は、せいぜい40字以内。短文にするには、単文でなくてはならない。単文というのは、一つの文章に、主語が一つ、述語が一つの文のことである。分かりにくい文章は長く、大体、文章が複文だったり、重文だったりする。こういうときは、その文章を半分にしていく。単文になるまで何度も切っていくと、分かりやすい文になる。
■一つの文に2つ以上、同じ言葉を入れない
くどくて分かりにくい文章がある。そういう文章は、この原則から外れていることが多い。手直しの手順は次の通り。
▽その重複がどうして起こったのか考える。
▽不要な場合は、片方を削除する。
▽少し違った意味で使っているときは、どちらかを適切な言葉に置き換える。
▽どちらも必要な場合は、その文章を分割して重複を避ける。
■しつこく通読する
論文を書く能力で、どうしても落とせない、最終兵器はなにか。それは、「しつこさ」である。
しつこく何度も頭から読んでみて、「スッと通るかどうか」「主語と述語は合っているか」「長い文章はないか」「修飾語と修飾される語とが、離れていないか」などを「しつこく」検討する。見直したい点は、次の通り。
・長い文章
・主語述語関係
・その言葉はどこにつながっているのか
・読点を入れないと誤読しそうなところは
・読点が多過ぎないか
・難語、抽象語、スローガン、一般社会情勢分析、感情語、理学用語は全て排除
(5)内容を考える
■よい論文を書こうとは思わない
いざ、書き始めようとしても、なかなか始められない、どう書き始めたものか、どうもスタートができないということがある。これは、よい論文を書かなくてはという気負いがあるからだ。その気持ちがあるうちは、なかなか書き始められない。大切なのは、自分がどのような教育活動をしたいのかである。それはなぜなのか、子供のために自分には何ができるのか、などに焦点を当て、書き始めよう。
■難しい言葉は使わない
論文を書くときには、少しでも易しい言葉で書くべきである。難しい言葉を使うと、頭が固まってしまって、次が出てこなくなる。例えば、「理解」といわないで、「分かる」といえばいい。難しい言葉を使うと、全てその調子で書かなくてはならなくなる。
■正解ではなく、「私ならこうする」
教育全般、とりわけ学校教育の問題は、ものすごく複雑な事柄である。経験の浅い受験生に、簡単に「正解」などは書けるわけがない。出題側は、受験生に何を期待しているのか、何を見ようとしているのか。それは、問題に対する、分析力と具体的な姿勢を見ようとしているのである。だから、最初の3行では、「私ならこうする」と切り出す。繰り返すが、それは、正解である必要はない。具体的な授業例やアプローチを2~3述べて、なぜそれをするのかを述べる。最後に、「これで解決とはいかないかもしれない。しかし私は、ともかくもこういうことをやってみたい」と結ぶ。