皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回は筆記試験直前対策として新しい法令や改正事項などについて確認していきたいと思います。
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2023(令和5)年4月よりこども家庭庁が発足しましたが、それと合わせて「こども基本法」が施行されました。こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法という位置付けで、第3条には6つの基本理念が規定されています。第1条の冒頭で、「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり」とある通り、「児童の権利に関する条約(以下児童の権利条約)」の基本原則が反映されています。
児童の権利条約における基本原則とは、(1)差別の禁止(2)児童の最善の利益(3)生命・生存・発達に対する権利(4)意見を表明する権利――の4つで、これは22年12月に改訂された「生徒指導提要」でも重要視されています。試験対策としては、こども基本法第3条の基本理念を中心に、この児童の権利条約につながる重要語句(「差別的取扱いを受けることがない」(第1号)、「生活を保障される」「健やかな成長及び発達並びにその自立が図られること」(第2号)、「意見を表明する機会」(第3号)、「最善の利益が優先して考慮される」(第4号))などをチェックしておきましょう。
また、こども家庭庁に、内閣総理大臣を長とする、こども政策推進会議を設置し、政府が策定するこども施策についての大綱の原案を決定することが示されています。このような一般時事的な内容も確認しておくようにしましょう。
こちらは23年4月より改正施行されました。教員免許更新制の廃止に伴う改正で、新しい内容は、任命権者による「校長及び教員の研修にかかわる記録の作成」が義務付けられたことや、初任者研修(第23条)と中堅教諭等資質向上研修(第24条)の実施主体の表記が「任命権者」から「研修実施者」に変更になったことなどです。「研修実施者」とは、中核市の場合は、中核市の教育委員会、その他の場合(政令市や都道府県、中核市以外の市町村)は従来通り任命権者のことを指します。ちなみに研修実施者は、校長および教員の「教員研修計画」の作成も担当します。
22年4月より一部を除き施行されていましたが、23年4月からデータベース登録に関わる部分についても施行されました。児童生徒への性暴力をしたことにより懲戒免職などの処分を受けて免許状が失効した者(特定免許状失効者など)をデータベース登録し、免許状の授与や職員の採用や雇用の際にデータベースを参照するというものです。この法律については他の部分も重要なので、空欄補充や正誤問題などに対応できるように備えましょう。
特別支援教育関連では、特別支援学校設置基準の制定や学校教育法施行規則の改正による「特別支援教育支援員」「医療的ケア看護職員」などの職員の規定、障害による差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)における「民間事業者の合理的配慮の提供義務」(24年施行予定)が重要事項です。なお、この障害者差別解消法は「人権三法」の一つで、「部落差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」と共に16年に成立しました。併せて確認しておきましょう。また最新法令ではありませんが、19年施行の「学校教育の情報化の推進に関する法律」も頻出です。第3条に示す基本理念を中心に確認しておくとよいでしょう。
5分でわかる教育時事2023 第10回 問題編
1.次の文は「こども基本法」の条文の一部である。空欄に当てはまる語句を書きなさい。
第3条
こども施策は,次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 全てのこどもについて,個人として尊重され,その基本的人権が保障されるとともに,差別的取扱いを受けることがないようにすること。
二 全てのこどもについて,適切に養育されること,その生活を保障されること,愛され( ア )されること,その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに,教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
三 全てのこどもについて,その年齢及び発達の程度に応じて,自己に直接関係する全ての事項に関して( イ )を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
四 全てのこどもについて,その年齢及び発達の程度に応じて,その( イ )が尊重され,その最善の( ウ )が優先して考慮されること。
五 こどもの養育については,家庭を基本として行われ,父母その他の保護者が( エ )を有するとの認識の下,これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに,家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより,こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。
六 家庭や子育てに夢を持ち,子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。
2.次の文は,「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(令和4年4月1日施行) の条文の一部です。 条文として正しいものには○印を,正しくないものには×印を書きなさい。
A 第4条 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策は,教育職員等による児童生徒性暴力等が全ての児童生徒等の学習権を侵害する重大な問題であるという基本的認識の下に行われなければならない。
B 第6条 地方公共団体は,基本理念にのっとり,教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策について,医療関係者と協力しつつ,その地域の状況に応じた施策を策定し,及び実施する責務を有する。
C 第8条 学校の設置者は,基本理念にのっとり,その設置する学校における教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
D 第9条 学校は,基本理念にのっとり,関係者との連携を図りつつ,学校全体で教育職員等による児童生徒性暴力等の防止及び早期発見に取り組むとともに,当該学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは,適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
E 第10条 教育職員等は,基本理念にのっとり,児童生徒性暴力等を行うことがないよう教育職員等として防止に係る研修に励むとともに,その勤務する学校に在籍する児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは,適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
解答
1 解答 ア 保護 イ 意見 ウ 利益 エ 第一義的責任
2 解答 A:× B:× C:〇 D:〇E:×
【解説】A:「学習権を侵害する」ではなく「心身の健全な発達に関係する」である。B:「医療関係者」ではなく「国」である。E:「防止に係る研修に励む」ではなく「倫理の保持を図る」である。
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