【教育課程を学ぼう(20)】体験活動の充実と実施に向けた工夫

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 国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授 工藤文三
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 学校における体験活動の充実は、2006年改正の学校教育法に明記されるとともに、学習指導要領にも示されてきた。体験活動の意義やその具体的な位置付け、実施に向けた工夫について整理してみたい。

体験活動の意義と位置付け

 06年に改正された学校教育法では、第30条において学校教育で目指す3つの資質能力が示されたが、続いて第31条では、次のように体験活動の充実に努めることを明記した。「第31条 小学校においては、前条第一項の規定による目標の達成に資するよう、教育指導を行うに当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならない」。

 ここでは、体験的な学習活動、中でも社会奉仕体験活動、自然体験活動の充実を求めていることが分かる。

 現行の学習指導要領では、第1章総則の第1、2(2)において、道徳教育に関連して次のように示されている。

 「(2)道徳教育や体験活動、多様な表現や鑑賞の活動等を通して、豊かな心や創造性の涵養を目指した教育の充実に務めること」。

 続いて、「第3 教育課程の実施と学習評価」の1(5)において、「児童が生命の有限性や自然の大切さ、主体的に挑戦してみることや多様な他者と協働することの重要性などを実感しながら理解することができるよう、各教科などの特質に応じた体験活動を重視し、家庭や地域社会と連携しつつ体系的・継続的に実施できるよう工夫すること」としている。ここでは「生命」「自然」「主体性」「協働」との関わりで体験活動を重視するとしている。

教科などの特質に応じた具体化と工夫

 体験活動を児童生徒の学習に具体化するためには、各教科などで取り扱う内容に即して、体験活動をどのように進めるのかを整理することが有効である。例えば、小学校社会科3・4学年の内容に「見学・調査したり地図などの資料で調べたり」してまとめる学習が示されている。見学や調査の学習において、体験活動を計画したり、学習を終えた後に振り返ったり、表現したりする活動が想定される。中学校理科の「指導計画の作成と内容の取扱い」では「観察、実験、野外観察などの体験的な学習活動の充実に配慮すること」とされ、理科の学習で欠かせない「観察」「実験」が「体験的な学習活動」とされている。

 また、複数の教科などを関連付けて体験的活動を計画的に実施する工夫も考えられる。例えば、特別活動や総合的な学習の時間と教科の学習とを関連させて、体験的な活動を計画的に実施する。特別活動の「集団宿泊的行事」の計画を立てる際に、社会科の地理的・歴史的内容と関連させて見学・調査活動を位置付けたり、理科の自然観察活動を位置付けたりすることが考えられる。さらに、総合的な学習の時間において、課題の追究、見学や調査などの活動を行う際に、教科の学習と関連付けた体験活動を計画することができる。

 体験的活動は単に実施すればよいというわけではなく、学習の過程で計画―実施―振り返り―表現―まとめなどの活動を位置付けて、活動の効果を高めることが大切である。

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