2017年の学習指導要領の改訂で、総則に「学習評価の充実」の項目が示され「学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう、組織的かつ計画的な取り組みを推進する」ことが示された。学習評価の妥当性や信頼性を高める取り組みとはどのような内容を指しているのであろうか。
学習評価の妥当性、信頼性について、学習指導要領解説総則編にこれらの意味についての説明はなされていない。教育の専門書や関係する事典には、やや学術的な立場からの説明がなされているが実践的とはいえない。各教科の評価が目標に準拠した評価として、また観点別評価として実施されていることを踏まえると、妥当性とは、次の意味を含むと考えられる。
(1)当該の学習評価が対象としている内容や範囲は、授業における目標と内容に正対したものとなっているかどうか
(2)目標の実現状況を把握することができる評価の方法となっているかどうか
(3)評価しようとしている観点別の知識や能力等を評価するのに適した評価方法となっているかどうか
信頼性とは、評価の結果として示される学習状況の判断は正しいものといえるのか(例えば、評定結果の「4」は「5」や「3」でなく「4」で間違いないか)。
妥当性についての課題は、(1)については、重要な学習内容が評価対象とされなかったり、(3)は、思考・判断・表現を評価するための問いが、結果的に知識を問うことになってしまったりする場合が該当する。信頼性についての課題は、観察法や記述、作品などによって評価する際に、評価者の解釈の在り方が判断に作用する懸念を指している。また、総括の手続きも信頼性に影響を及ぼす。
それでは学習評価の妥当性や信頼性を高めるためには、どのような取り組みや工夫が必要であろうか。第1に、指導計画と評価計画を一体的に進めることが挙げられる。指導計画における重要な狙いや内容を適切に評価できるよう、評価の場面と評価方法を計画的に設定する。このことによって、授業の重点事項を評価の対象として設定し双方を分離せずに、進めることができる。
第2に、評価方法の工夫改善を進めることである。例えば、ペーパーテストやワークシートであれば、評価しようとしている観点にふさわしい問いを用意することが重要である。特に「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」の評価については、問いが求めている内容がその観点に適合しているのかを吟味することが大切である。
第3に、児童生徒の記述したものや行動を評価する場合は、評価の着眼点を明確にすると同時に、評価の作業を吟味したり振り返ったりして必要に応じて調整するようにしたい。第4に、既に用いたことのある評価方法とその結果を整理し、実際の評価の際の判断基準に生かすようにする。最後に、学習評価の手続きや方法を児童生徒や保護者に説明するとともに、学習評価が児童生徒の学習の改善に生かされることを共有することも信頼性を高めることにつながる。