現行の学習指導要領総則には、小中高校とも「学習内容を確実に身に付けることができるよう」指導方法や指導体制の工夫改善によって、個に応じた指導の充実を図ることが示されている。
指導方法としては、「個別指導やグループ別指導、繰り返し指導、学習内容の習熟の程度に応じた指導、児童の興味・関心等に応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習などの学習活動」と7つが示されている。これらのうち、個別指導やグループ別指導は1998年改訂から小中学校とも示されており、繰り返し指導は小学校のみに示されていた。03年改訂以降、現行と同じ内容の指導方法が示されることとなった。
学習内容の習熟の程度に応じた指導は、78年改訂の高校学習指導要領で示され、続いて89年改訂では中学校に、03年改訂では小学校でも実施可能とされた。03年改訂において、児童の興味・関心などに応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習などの学習活動が示されたのは、学力低下への不安の世論に対して、確かな学力への方策を明確にするとの趣旨があったからである。
この時の改訂では、それまでの学習指導要領に示されていた、いわゆる「はどめ規定」を原則削除するとともに、発展的な学習を可能にしたわけである。「はどめ規定」とは、各教科の内容の取り扱いなどに示された「~扱うにとどめるものとする」「触れるにとどめる」などの取り扱いの制限のことを意味している。
続いて指導体制については、「教師間の協力による指導体制」が挙げられている。「教師間の協力」とは、ティーム・ティ―チングだけでなく、養護教諭や栄養教諭との協力や地域の専門家の協力を得た取り組みなどが考えられる。
ここに挙げられた指導方法、指導体制は「学習内容を確実に身に付ける」ことが目的であり、また、個に応じた指導の充実に資するものといえる。指導方法や指導体制を検討する際には、まず、児童生徒の学習上の課題や学習状況を把握することが必要である。学習の遅れがちな児童生徒に対しては、例えば個別指導や補充的な学習を取り入れることが考えられる。単元や学習内容の特性によっては繰り返し指導が有効である。
次に、学習内容の習熟の程度に応じた指導については、教科の特性も踏まえて学級内または学級の枠を超えた学習集団を編制することになる。児童生徒の学習集団の選ばせ方やそれぞれの学習集団における指導方法や学習活動、学習評価などをどのように進めるか、十分な検討を行った上で実施することが大切である。また、一定の実施期間を経た後に、取り組みとその効果を総合的に検証・評価することも重要である。
一方、ICT機器の普及と活用によって、ここで挙げられた個別指導、グループ別指導、繰り返し指導、課題学習、補充的な学習、発展的な学習については、これまで以上に取り組むことができるようになった。きめ細かな評価を行いながら、指導方法や指導体制の工夫を進め学習内容の確実な習得を図るようにしたい。