【教育課程を学ぼう(25)】個別最適な学びと協働的な学び

【教育課程を学ぼう(25)】個別最適な学びと協働的な学び
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 国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授 工藤文三
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 個別最適な学びと協働的な学びは、2021年3月の中教審答申(「令和の日本型学校教育」の構築を目指して)に示された学びの方向性である。答申では、これまでの日本の学校教育のよさを引き継ぎながら「全ての子供たちの可能性を引き出す」学びの姿として、これらの学びを提起している。ただ、17年告示の現行学習指導要領には示されてなく、今後の学びの在り方を方向付けたものといえる。

個別最適な学び

 答申では、個別最適な学びとは、個に応じた指導を学習者の視点から整理した概念としている。ここでの個に応じた指導とは、指導の個別化と学習の個性化を内容としている。前者の指導の個別化とは、支援が必要な児童生徒に重点的な指導を行うこと、児童生徒一人一人の特性や学習進度、学習到達度に応じ、指導方法や教材、学習時間などの柔軟な提供や設定を行うことを指している。

 次に後者の学習の個性化とは、探究学習の課題の設定、情報の収集・整理・分析、まとめ・表現など、教師が児童生徒一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供し、児童生徒が自分自身に最適な学習を調整できることとされている。

 実際の授業場面で考えると、前者の指導の個別化を進めるためには、個別化された教材の準備が必要であり、学習時間を柔軟に設定するための工夫が求められる。単元の目標に到達するための指導計画をより柔軟に作成しておく必要がある。後者は、現在進められている主体的・対話的で深い学びにおける、自己調整を生かした学習が該当する。また、指導の個別化、学習の個性化は、ICTの活用による効果が期待される。

協働的な学び

 協働的な学びについては、児童生徒相互の学び合いを通じて、一人一人のよい点や可能性を生かすこと、異なる考え方が組み合わさってよりよい学びにつながること、また、学び合いを通じてお互いの感性や考え方などに触れ刺激し合うことの重要性を指摘している。

 学び合いは、同一学年・学級だけでなく、異学年間や他の学校の児童生徒との学びなども含むとしている。例えば、学校行事や児童会・生徒会活動などを含めさまざまな活動において異学年間の交流機会を充実することで、自分自身を振り返ったり、自己肯定感を育んだりすることも大切としている。

 ICTの活用は、一人一人の気付きを共有したり、そこからさらに学習を深めたりするきっかけを与える点で有効といえる。協働的な学びは、これまでも取り組まれてきた学びの姿である。この学びのよさをICTの活用も生かしながらさらに進めることを求めているといえる。

 一方、Society5・0時代、DXという時代の転換期における教育・人材育成の在り方として個別最適な学びと協働的な学びを位置付ける提言もなされている。「Society5・0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ<中間まとめ>」(内閣府総合科技術・イノベーション会議21年12月)によると、これまでの同質性・均質化した教育・人材育成から、多様性を重視した教育・人材育成への転換を掲げ、そこにおける学びの在り方として個別最適な学びと協働的な学びを挙げている。

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