【ポストコロナと教育格差(6)】「出口」の格差

【ポストコロナと教育格差(6)】「出口」の格差
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 小学校入学を教育システムの入口とするなら、出口は最終学歴と位置付けることができる。今回は、その「出口」の格差について述べてみたい。

 教育を受けた後の進路の多様性を「格差」と呼ぶのは、適切ではない場合もある。しかし、高賃金や高い社会的地位を得やすい「大卒」資格獲得の可能性が、子供たちの社会経済的背景によって異なる実態があるという視点で見ると、それは教育格差の問題として捉え得る。

 インターネットで「コロナ 差をつけるチャンス」と検索してみると、実に多くの予備校や塾のブログがヒットする。そういう側面があることは否定しないが、家庭の条件が違う中では過酷なメッセージでもある。

 受験期の生徒を対象に日本財団が5月に実施した「18歳意識調査」でも、58.6%の回答者が「休校措置により、教育格差を感じる」と答えている。恵まれた個人にとっては「差をつけるチャンス」かもしれないが、そうでない個人や教育システムを外側から眺めると「差がつくピンチ」でしかない。ただこの点は、「学歴の格差」というよりは、「学校歴の格差」の問題である。

 学歴の格差に関して言うと、家庭の条件によって学力に差がついた結果として生じるだけのものではない。たとえ学力が同程度であったとしても、経済力がある方が進学しやすくなるし、親自身の職業や学歴と同程度であれば十分だと考える(下降回避)メカニズムも子供の中には存在する。

 今回の経済悪化によって、大学生の2割が退学を検討しているという報道もあった。今は家庭の経済力の差が浮き彫りになっており、厳しいやりくりを迫られている家庭もあるだろう。そうした状況の中では、「下降回避」のメカニズムも強化される可能性がある。

 つまり、あくまでも可能性の問題であるが、本人が大学進学を検討していたとしても、家庭が経済的に不安定だと判断した段階で早々に進路を変更してしまうこともあり得るし、保護者の方も大学進学希望を「冷却」するかもしれない。

 コロナ流行に際して問題になるのは、進路を選ぶ時の制約が不均等に子供たちに降りかかってしまうことである。学校教育に経済悪化の直接的な穴埋めはできないが、各種奨学金や給付金の充実を図ること、その情報を正しく伝えることが求められる。

 また、今後も休校措置を取らなければいけない可能性は十分にある。その時、学びの機会を確保し、「チャンス」にも「ピンチ」にもしないためにも、オンライン学習環境の整備が急務である。

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