今回と次回は、コロナ禍で急速に需要が増大した学習のオンライン化について、教育格差の視点から考えてみたい。
まず、休校期間にどのように家庭学習が課されたか見てみよう。文部科学省から二つの時点における調査結果が公表されている。4月16日時点と6月23日時点で、設置者単位で見て、テレビ放送の活用が24%→38%、教育委員会等が作成した学習動画の活用が10%→26%、デジタル教材の活用が29%→40%、双方向オンライン授業が5%→15%となっている。教科書や紙の教材の活用は、いずれの時点でも100%である。
双方向のオンライン授業が何かと話題になるが、実際は義務教育段階ではほとんど行われておらず、校種による違いも大きい(6月23日時点の自治体ベースで小学校8%、中学校10%、高校47%)。背景には、オンライン授業の環境を整えられぬうちに、分散登校が可能になったということもあるだろう。また、端末整備状況はもちろん、取り組み方に関しても自治体間の差がある(というよりは、突出している自治体がある)印象だ。
もちろん、各家庭における端末の有無やWi-Fi環境に格差があることも大きな障壁の一つであるし、そもそもネットワーク環境の地域差もある。私が大学で担当しているオンライン授業でも、実家に帰っている学生の何人かは、途切れがちに授業を視聴している。ある学生は、「通信会社からはお手上げだと言われました」と教えてくれた。
内閣府の調査(新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査・6月調査)では、東京23区の小中学生は26.2%が学校の先生からオンライン授業を受けていたのに対し、地方圏では6.7%にとどまっていた。塾や習い事のオンライン授業でも、東京23区で33.8%、地方圏では11.6%であった。オンライン授業を受ける教育機会の格差は、家庭間と地域間に二重に存在している。
今後、全国一斉休校措置ではなく、地域ごとの実情に応じて休校措置が取られた場合、当該地域だけが取り残されるということが起こりかねない。緊急時に学びの機会を保障するには、端末等の貸し出しをスムーズに行えるよう実態把握を普段から行っておく必要がある。また、1人1台端末の配付や持ち帰りが可能になった場合は、定期的にオンラインの学習を行い、緊急事態に備えておくことも必要だろう。
しかし、である。環境を整えたとしても、それだけで教育格差は埋められない。次回は、オンラインでの学び方について考えてみることにしよう。