本連載ではこれまで、応用行動分析(ABA)に基づいた関わりの基本を紹介してきました。今回は、学級経営にダイレクトに生かせる方法として、日本でも少しずつ広がりを見せている「スクールワイドPBS」(School―Wide Positive Behavior Support)についてご紹介したいと思います。
「スクールワイドPBS」とは、ABAの考え方に基づき、子供たちのポジティブな行動が起こりやすくなるような仕掛けをつくり、行動が起こったら認められ、褒められるサイクルを学校全体で回していくような取り組みを指します。記録を取って、成果を確認しながら進める点も特徴の一つです。
米国では、オレゴン州を中心に、ポジティブな行動支援が学校単位で体系的に実践されてきました。ある米国の研究では、全体の3分の2以上で児童の問題行動が80%減少するというデータも示されており、その高い効果からさまざまな学校でノウハウが導入されています。いじめや学級崩壊の減少などについても、大きな成果を上げている取り組みです。
国内では、徳島県が日本で初めて通常学級に「スクールワイドPBS」を本格導入しました。県のホームページでは、「ポジティブな行動支援実践事例集」が公開されています。「あいさつ」「話を聞く」「そうじ」など、教員が話し合って大切にしたい目標を定め、子供も一緒になってルールを決めたり、ポイントやシールなどで褒める仕組みが明示化されたり、校内の実践で参考になる取り組みが多数掲載されています。
この他に、PBSの実践・研究・普及を目的とする国際組織「The Association for Positive Behavior Support」の日本組織として正式に承認された「日本ポジティブ行動支援ネットワーク(APBS―J))が、PBSの入門研修シリーズを公開しており、学校での研修などに活用が可能です。
学校内でのポジティブなコミュニケーションが増え、子供たちの成功体験が増えていくことは、不登校や引きこもりといった二次的な課題の予防にもつながっていくはずです。子供たちの多様性を前提としたポジティブ支援のノウハウは、通常教育の現場でこそ広く取り入れられていってほしいと思います。