2016年に小学校教員を退職した後も、私は学校教育に関する情報に注目しています。「GIGAスクール構想」の実現に目を見張る一方、心を痛める情報も多くあります。20年度における小中高校生の自殺者数は過去最多の415人。いじめ、暴力行為、不登校などの報道に、教員の指導が難しい時代だと感じています。強く指導すれば、子供たちが反発したり絶望的になったりして、先生の願いが通じず、心が折れることも多いのではないでしょうか。そうかといってきちんと指導をしなければ、問題が深刻化・複雑化したり、状況が悪化したりすることもあるでしょう。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会では「怒る」と「叱る」を区別せず、「怒る=叱る」と考えています。ここ一週間を振り返って、叱った事例を思い出してメモしてみてください。どのような出来事について、どのような言葉で叱り、その時にどのような態度を取っていましたか。
「叱る」を辞書で引くと、「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」(goo辞書)と記載されていますが、当協会ではこれを内容と技術の2つで再定義しています。
内容は「主:リクエスト、副:私の気持ち」。
技術は「練習で上達するもの、理論+テクニック」。
このことを理解し、実践することで、誰でも上手な叱り方を身に付けることができます。上手な叱り方は次の通りです。
【基準】
・叱るときの基準が明確であること
・叱るときの基準の納得性が高いこと
【リクエスト】
・リクエストが具体的で明確であること
・行動に移した時の評価ができること
【表現】
・穏当な表現、態度、言葉遣いであること
・相手を責めないこと
上手な叱り方について学んだ時、私は自分の過去の叱り方を思い起こして赤面しました。やっていたのは上手な叱り方の真逆ばかり。とがめるだけで恐怖心を与えてばかりの先生でした。
さて、メモされた事例に「基準」「リクエスト」が入っていましたか。穏当な表現でしたか。例えば、提出物が遅れがちな子供には「〇月〇日の朝の会まで」と期日を明示すると、提出できたかどうかの評価ができます。穏やかな口調や言葉遣いで伝えることも心掛けてください。
先生方の周りには叱り上手な人はいませんか。その人の様子を観察し、まねをすることで叱り上手になれます。また、つい口にしがちな言い方をやめてみる、トーンを変えてみる、機関銃のような早口で話をしないなど、どれが効果的かを一つずつ試し、叱り上手な先生になってください。教師の努力で子供たちの行動は見違えるほど変容していきます。