「学力向上」は学校の目標であり、目的の一つです。では、あなたの学校は「学力」を正しく定義しているでしょうか。
「入試で求められる認知能力だ!」
「予測不可能な時代を生き抜くための非認知能力だ!」
極端な言い方をすれば、大きくこの2つの意見に分かれそうです。これらの間には個人の中でグラデーションがあり、「学力」という言葉への理解には多様な考えが存在します。そうした中、お互いの「学力」への価値観が共通認識となっていない学校で、協働的にカリキュラムマネジメントができるでしょうか。子どもたちが学ぶための環境を整えることができるでしょうか。
「学力」への多様な考えを学校で一つの方向性としてマネジメントするために行うのが「学力を『再定義』する」ことです。
このワークショップでは、創る活動を2つのワークで行います。知る活動では、基本的には学習指導要領の方向性と学校の学びを一致させることも目標の一つですので、「資質・能力」や「令和の日本型学校教育」、「Society5.0」への理解などを行います。また、自分の理想とする教育について考えるチェックインやアイスブレイクをしておくことも効果的です。
京都大学の塩瀬隆之准教授の問い「『働く』の対義語・類義語は?」をアレンジし、①「学ぶ」の対義語・類義語を3つずつ出してもらいます。その後、グループで共有し、全体でも共有し、対義語と類義語を整理します。多くの場合、どちらにも共通して入る言葉(「遊ぶ」が象徴的)が現れます。ナラティブが異なることの証明として取り上げることが、ファシリテートのポイントになります。
まず、個人で子どもたちに学校での学びを通じて身に付けてほしい力についてブレインストーミングを行います。その後、グループで思考ツールのダイヤモンドランキングを使って整理・分析を行い、全体で共有します。この際にどんな意見も否定せずに受け入れた上で大きな方向性を示すことが、ファシリテートのポイントとなります。
実は「学力を『再定義』する」ことの目標は、具体的に定義することそのものが目的ではありません。日々同じ職場で子どもたちと関わる同僚の教育への価値観を共有することが目的です。狭い価値観で固定観念となっている学びや学力への考え方をほぐし、お互いの価値観に共感することを目指します。価値観が全く同じでなくても、一定の大きな方向性を共有することで学びのデザインが共有されていきます。その上で教育目標やカリキュラムマネジメントに進んでいくことで学校の学びが変わっていくはずです。