不安が高い子どもと少し話すと、その特徴的な考え方に気が付くと思います。「自分はいつでも失敗する」「皆が私のことを嫌っている」「完璧でないと意味がない」といった、一見「マイナス思考」に見えるような考え方が目立つかもしれません。しかし、この思考をプラスに変えるように試みてもうまくいかないことの方が多いのではないかと思います。「そんなことはないよ」「もっと前向きに考えて」とつい言いたくなってしまいますが、それは効果的ではないように思われます。
当たり前のことですが、考え方は人それぞれです。他の人にとっては不思議でも、不安が高い子どもは自分なりの考え方を強く持っていることがあります。例えば、母親と別れることに不安を感じる分離不安を示す子どもは、「離れている間にお母さんは事故に遭ってしまって二度と会えないかもしれない」と考えます。あるいは、台風のニュースを見て心配している子どもは、「今すぐ台風が来て家が壊れてしまうのではないか」と考えます。どちらも発生する確率はゼロではないので、こうした考えは完全に間違っているわけではありません。発生する確率の極めて低い事象を、確実に起きてしまうかのように感じていることが問題なのです。
また、人前で失敗することを恐怖する社交不安の子どもは、「一度でも失敗してしまったらおしまいだ」「間違えたらみんなの笑いものになる」と考えていることがあります。こうした考え方の問題点は、結果を過大に評価している点です。人前で何かをする際には多少なりとも言い間違えや小さなミスが起きるものだということに気が付けておらず、破局的な結果に焦点を当て過ぎてしまっているのです。こうした考えも、よくよく考えてみると、必ずしも間違っているわけではないので、「そんなことはないよ」「もっと前向きに考えて」と言われても子どもが納得できないのもある意味当然です。
そのため、考えをガラリと変えてしまうことを目指すのではなく、他の可能性はないかを一緒に探ってあげるとよいでしょう。まだ気が付いていないことや、これまでにどんなことが起きてきたかを振り返るようにします。例えば、「他にお母さんが帰って来ない理由はあるかな?」「実際に台風が来たときにはどうだった?」という具合にです。視野を広げることができたら、それに従って「実験」をしてみます。新しい考え方に基づいて、一歩行動してみるのです。「少し待っていたらお母さんが帰ってきた」「台風が来たけど家は大丈夫だった」など、子どもの実際の体験は何よりも大きな励ましになります。