同志社大学心理学部教授
本連載ではここまで、子どもの不安を解きほぐす方法として、認知行動療法の基本的な考え方を説明してきました。目新しい方法というよりは、ある意味では納得がいく、もしくは実際に試したことがあるやり方もあったのではないかと思います。
前回、不安のために不登校になっている子どもの例を取り上げました。そこで、この悪循環を断ち切るためにどのようなことができるのかを考えてみましょう。人が不安を克服するためには、不安を引き起こす状況や刺激にチャレンジすることが必要不可欠です。このような方法を認知行動療法では、エクスポージャー法と呼びます。エクスポージャー法は、不安を克服する上で中心となる技法です。
子どもが不安を感じているときには、実際の行動にも変化が生じています。例えば、登校するのに不安を感じている子どもであれば、学校はもちろん、それに関連する刺激を避けるという行動が最も典型的です。こうした行動を回避行動と呼びます。回避行動は不安を示す子どもの行動変化の中で最も特徴的なものと言えるでしょう。
不安が高い子どもと少し話すと、その特徴的な考え方に気が付くと思います。「自分はいつでも失敗する」「皆が私のことを嫌っている」「完璧でないと意味がない」といった、一見「マイナス思考」に見えるような考え方が目立つかもしれません。しかし、この思考をプラスに変えるように試みてもうまくいかないことの方が多いのではないかと思います。
本連載ではこれまで、子どもが不安を感じているときの、身体的な反応や特徴的な考え方、そして不安に関連して行動にも変化が生じることを説明してきました。中でも身体的な反応は、見逃すことができない要素になります。子どもは「不安である」と親や教師に言うことよりも、「頭が痛い」「お腹が痛い」「だるい」「やる気が出ない」と訴えることの方が、はるかに多いからです。
不安に困っている子どもがいたら、まずは不安について話してもらうことから始めましょう。不安が漠然としているからこそ、ますます不安になるのかもしれません。例えば、新型コロナウイルスに関する心配は、曖昧なことや分かっていないことが多いからこそ、ひどくなったりしないでしょうか。
不安で困っている子どもは、学校や家庭でどんな様子を示しているのでしょうか。毎年度行われている文科省の調査によると、主たる不登校の要因として最も多いのは「無気力・不安」であるとされており、2020年度においては不登校児童生徒に占める割合が46.9%とされています。
子どもの不安を考える上で、もう一つ避けては通れないテーマがあります。それがコロナ禍における影響です。 新型コロナウイルスによる影響は身体のみならず、精神的な健康にも影響をもたらすことが分かっています。
前回説明した通り、日常的に感じる不安と支援の必要な不安は見極める必要があります。今回はその判断基準を簡単に紹介します。 まず、子どもによく見られ、かつ問題となりやすい不安の種類を紹介します。第1に、愛着のある大人、つまり親から離れるのを怖がる分離不安があります。
認知行動療法という言葉を聞いたことがありますか。なじみのない方もいると思いますが、名前だけは聞き覚えがあるという方や、別の連載「不安の予防教育プログラム『勇者の旅』」で既に学んだという方もいるかもしれません。この認知行動療法、実は子どもの不安に対する支援として、半世紀以上の研究が積み重ねられてきています。
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