【人生を、そして世界を変える プレゼン教育のメソッド(9)】先生こそが失敗を見せて

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 今回は、心理的安全性についてお話をしたいと思います。私が全国各地の授業に伺って感じるのは、特に中学生以上になると、子どもたちがまるでよろいを着ながら授業を受けているような気がすることです。SNSが普及し、匿名性を悪用して誹謗(ひぼう)中傷なども行われる世の中で、子どもたちはLINEグループで外されないように気にしているとも聞きます。従前に比べ、精神的につらい環境にあることを懸念します。

 そのような中で、全員がみんなの前で自分の思いや考えを発表するプレゼンの場をつくるにあたり、私が最も大事にしているのは「心理的安全性」の確保です。こんなことを言ったら笑われる。こんなことを言っても誰も共感してくれない。そのような不安な気持ちがあれば、発表者の声は小さくなり、目線も下に向き、授業が苦痛になってしまうからです。

 学校は社会への第一歩を踏み出す場。その学校が、「何でも話せる場」になるか、「行くのもつらい場」になるかはクラスの環境次第です。そしてその環境は、先生方の在り方によって大きく変わると実感しています。クラスの先生が外部講師にも開かれた心で、クラスの課題や授業への期待を積極的にお話し下さるような場合は、総じてそのクラスの子どもたちも満面の笑みで歓迎してくれます。イレギュラーな出来事にも温かく対応される先生の姿からは、子どもたちから出るいかなるとっぴな意見も、鷹揚(おうよう)に受け止めていらっしゃる様子が伝わってきます。

 心理的安全性については教育現場に限らず、ビジネスの現場や家庭内でも重要です。20世紀の後半までは「論理的思考」が重視され、ある程度特定できる正解をルールにのっとって導き出していくことを良しとする風潮がありました。しかし今はVUCAの時代。ビジネスの現場においても、論理をベースに、強さ、優秀さ、機能の素晴らしさなどを前面に出すような偏差値教育の遺物に頼る戦略では、生き残りが難しくなってきています。むしろ組織内では、自分の弱みも積極的に開示しながら、一人一人が持つ多様性を取り込み、ビジョンやパーパスに向けて進んでいくような経営スタイルやリーダーシップが求められているのです。

 大人の私たちこそ、失敗して「てへっ」となる姿、間違いに気付いたらすぐに謝ってそれを正す姿を見せるべきです。その上で描くビジョンに向けて挑戦を続けていくことが、子どもたち一人一人が自ら輝ける場を見いだすことにつながるように思います。

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