最終回は、私たちのプレゼン教育を通じて「伝わった!」という体験をした何人かの子どもたちの「その後」をご紹介したいと思います。
東京都文京区立文林中学校を卒業した沢田優菜さん。彼女は、複数回のプレゼン授業の中で、修学旅行先で興味を持った京都・枯山水の花こう岩についてプレゼンをしてくれました。花こう岩に関する知識を広げ、その研究を深めた結果、岩石などを勉強したいと進路を決め、今は島根大学総合理工学部地球科学科で勉強されています。「地殻活動が活発で身近に研究できる環境がある国なのに、地学を学ぶ人は少ない。地学に興味を持つ人が増えるよう、大学教員や学芸員を目指したい」と将来の夢を語ってくれています。
小学5年生の時に私たちのプレゼン授業を受けてくれた上野英恵さんは、年々上昇する実用英語技能検定の受検料に疑問を持ち、「このままでは教育格差が広がっていくばかりだ」と英検受検料の値下げを求める声を上げました。オンラインで3万5千人以上の署名を集めた彼女の活動は朝日新聞でも報じられ、2022年度には英検の受検料が下がりました。おとなしく控えめだった彼女は、プレゼン授業ではきはきと自分の意見を述べる周りの友達の姿に感動し、主張することの大切さを学び、人前で話す度胸がついたと言います。
小学生の時に複数回ワークショップを受けてくれたN.O.さんは、高校に上がってからの「高校生アイデアフェス」で、仲間と一緒に考える子宮頸がんをテーマに発表し、特別賞を受賞しました。「発信していくことには意味があるということ、世界を変える力があるということを感じることができた。もっと上手に自分の意見を言えるようになれば、もっと多くの人に関心を持ってもらえると思う」と、将来は医学の道に進んで世の中に貢献したいと語ります。
プレゼン授業での「伝わった!」という経験が、その後の人生や、社会を変え得るアクションへとつながった子どもたちが複数いることを大変頼もしく思います。百人いれば百の異なるアイデアや思いがあり、それが伝わることで、周りの共感やサポートを呼び込み、実現に向けて大きく前進する。この体験を、社会に出る前の全ての子どもたちにしてほしい。子どもの頃の私のような「話せない子」を一人も取り残さず、日本の未来をより明るいものへと変えていきたい。全ての子どもに「話す力」を。一人でも多くの方がこの活動にご賛同いただければ、この上ない喜びです。
(おわり)