【子どもの不安を解きほぐす認知行動療法(9)】不安にチャレンジする

【子どもの不安を解きほぐす認知行動療法(9)】不安にチャレンジする
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 前回、不安のために不登校になっている子どもの例を取り上げました。そこで、この悪循環を断ち切るためにどのようなことができるのかを考えてみましょう。人が不安を克服するためには、不安を引き起こす状況や刺激にチャレンジすることが必要不可欠です。このような方法を認知行動療法では、エクスポージャー法と呼びます。エクスポージャー法は、不安を克服する上で中心となる技法です。

 例えば、自動車教習所で免許を取る前には、路上教習に出るのに不安があったことと思います。しかし、いったん運転に慣れてしまえばその不安は扱える程度に下がったことでしょう。このように不安なことであっても、「慣れて平気になる」という経験を私たちは必ず積んでいます。このときに重要な点は、十分な技術を身に付けた上で安心・安全な環境で練習するということです。事故に遭ってしまったら恐怖や不安はますます強くなってしまいます。

 不登校の支援にこの考え方を当てはめてみましょう。いきなり何の準備もなく学校に連れて行くのは得策ではありません。安全を確保してできるところから少しずつ実施していくことが大切です。エクスポージャー法自体は、高い不安刺激にも適用できるのですが、スモールステップの方が、多くの子どもは無理なく取り組めると思います。その際、最初のステップは、子どもが確実にできることにしてあげましょう。「チャレンジ」と言うと、スパルタ的なもの、あるいは「えいや!」とできないことをイチかバチか実施するようなイメージを持ってしまいますが、それは違います。

 以前の回で説明した母親と別れることに不安を感じる分離不安を示す子どもなら、例えばお母さんに買い物に行ってもらう際の留守番というチャレンジがあります。日常の近所への買い物について、いつもよりも少しだけ時間を長くするのです。その際に、子どもにどんなことが起きそうか事前に予想を聞いておきます。そこで、「事故に遭うかもしれない」と考えている子どもであれば、実際に母が無事に帰ってきたという予想とは異なる事実を体験してもらうわけです。そうした実際の体験は、子どもにとって何よりも大きな励ましになると以前の回で説明しました。

 ここで大切なのは、子どもの課題に合ったステップについて、なるべく細かく段階を設ける点です。例えば、不登校の子どもに保健室登校を提案したとしても、それが子どもにとって難し過ぎる課題ではうまくいきません。大人から見てではなく、子ども自身にとって簡単なチャレンジを実際にして、その結果を体験するということが重要になります。

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