【「頼るスキル」の磨き方(5)】ヘルプを出しにくい日本の組織風土

【「頼るスキル」の磨き方(5)】ヘルプを出しにくい日本の組織風土
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 ある学校で、教員や生徒が受援力を発揮することを妨げる要因について調査を行ったところ、最も多かったのは「一人で抱え込む」パターンでした。特に教員は責任感と使命感が強く、周囲から「やる気」を疑われることを嫌います。それはとても尊いことではありますが、負担が大きくなり過ぎると、ストレスで体調を崩したり、周囲との人間関係がうまくいかなくなったりと、悪影響を及ぼしてしまいます。

 皆さんの周囲にも、周りの人に頼めばいいのに頼めない人、自分でやらないと気が済まない人、声掛けをしても「大丈夫」と返答する割には「自分だけ忙しい」と愚痴をこぼすような人は、いませんでしょうか。そのような人を増やさないためにも、「小さなうちにSOSを出して快く支援を受ける」経験が必要なのです。

 前回、私がドイツやイギリス、アメリカで出産・子育てをしていた頃、頼ることを許容する風土を感じたと述べました。翻って日本にいた頃は、つらいことや疲弊すること、自分ではどうにもならないことがあっても、「できないのは自分が未熟だから」「できて当たり前」と自分を責め、身近な家族にさえ、愚痴を言ってはいけないような雰囲気を感じていました。日本にはまだまだヘルプを出しにくい組織風土があるのでしょう。

 私自身、医師としての多忙な勤務と6人の子の子育ての中で、産後うつなども経験しました。そうした経験を経て、他者に助けを求め、快くサポートを受け止めることの大切さ、受援力の必要性を痛感しました。そして、つらいのに声を上げられない人にそのことを伝えたいと考え、さまざまな場で自分の中の「受援力」の見つけ方、「受援力」を高めるボキャブラリー、「受援力」を発揮することで周囲にもたらす効果などについて発信していくようになりました。

 誰かに何かを尋ねること、相談すること、お願いすることは、相手に対する信頼の証しであり、相手のことを高く評価しているからこその行為です。互いのことを知り合うきっかけづくりにもなりますし、頼り、お願いすることで、相手の自己効力感が向上し、健康状態も向上することが多くの研究結果から分かっています。

 相手を頼ることで相手が喜び、時に相手にプラス効果をもたらすことが分かったら、頼ることに対するためらいが消えるのではないでしょうか。

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