ここまで10回の連載で、学校の先生方や子どもたちが持つべきライフスキルとしての「受援力」について紹介してきました。なぜ、学びの場で「相談するスキル」が必要なのでしょうか。それは学びの場にこそ、お互いに頼り合うという行為が不可欠だからです。
私が小学校や中学校から「受援力」をテーマに講話を依頼される際は、たいてい企画の裏に「自殺予防対策や命の大切さを教える」という趣旨があります。子どもたちに対し、悩みを一人で抱え込まず早めに話してほしい、友達や先生たちだけでなく今は電話やチャットの相談窓口もあるし、ゲームの中に逃げ込んでもいいから、とにかく誰かとつながってほしい、命を絶ってほしくない、そんな現場の先生方の切実な思いが伝わってきます。
この時代に受援力を磨くためのトレーニングをするにはどうしたらよいのでしょうか。頼られた人が「人の役に立った」という喜びを引き出すような頼り方、いわゆる「受援力スキル」とはどのようなものなのでしょうか。
前回述べた「心理的安全性」を築いていくためには、対話を通じて一人一人への理解を深めることが大切です。職場のコミュニケーションでは、性別や世代などによる特性や個人のパーソナリティーも含め、試行錯誤しながら相手に即した関係性を築く必要があります。
皆さんは、「心理的安全性」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。Google社が2015年にチームの生産性を高める重要な要素として発表して以来、多くの企業や組織で注目を集めている考え方で、「一人一人がチームの中で自分らしく働いている状態」「安心して何でも言い合えると感じる状態」のことを指します。
ある学校で、教員や生徒が受援力を発揮することを妨げる要因について調査を行ったところ、最も多かったのは「一人で抱え込む」パターンでした。特に教員は責任感と使命感が強く、周囲から「やる気」を疑われることを嫌います。それはとても尊いことではありますが、負担が大きくなり過ぎると、ストレスで体調を崩したり、周囲との人間関係がうまくいかなくなったりと、悪影響を及ぼしてしまいます。
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