【「頼るスキル」の磨き方(7)】心理的安全性のために受援力の地図をつくる

【「頼るスキル」の磨き方(7)】心理的安全性のために受援力の地図をつくる
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 前回述べた「心理的安全性」を築いていくためには、対話を通じて一人一人への理解を深めることが大切です。職場のコミュニケーションでは、性別や世代などによる特性や個人のパーソナリティーも含め、試行錯誤しながら相手に即した関係性を築く必要があります。「この人はこういう場面では遠慮してしまって相談できないんだな」「この人にはこう頼めば喜んでくれるんだな」などということが分かってくれば、頭の中に受援力ネットワークの地図ができてくるかもしれません。

 一方、今の日本社会はこうしたオーダーメードの関係性を築きづらい状況があります。「同調圧力」が働き、「自己責任」の空気がまん延する中で「助けて」と声を上げられず、困っていても「頼ると人に迷惑を掛ける」と考えてしまう。その結果、多くの人がSOSを出すことができず、自力で全てを引き受け続けています。自殺者数が交通事故死者の約8倍という数字を見ても、人に「頼れない社会」の弊害が顕著に表れているように思います。

 自分ができないこと、明らかにオーバーワークなところは後輩を含めた周囲の人に助けてもらうことが大切です。メンバーに「ちょっと話を聞いてくれる?」と悩みを打ち明けることは、後輩や同僚に気持ちよく頼る「お手本」を示すことにもつながるのです。

 また、頼ることと同じくらい、断ることも、受援力の一つです。頼まれたことを引き受けられないくらいパンクしそうになっている自分の状況を相手に伝え、サポートしてもらうのです。「ちょっと余裕がなくて、ごめんね」「今はできないけれど、力になりたいと思っている。こうしたらどうかな?」「代わりに頼めそうな人、紹介するよ」と代案を示し、少しでも役に立ちたい気持ちを伝えることで、頼まれるばかりでNOと言えない状況から自分を守ることができます。

 太古から役割分担しながら文明を築いてきた私たちには、「人の役に立つとうれしい、幸せ」と感じる本能があります。「利己的な遺伝子」には、自分の遺伝子が生き残るために、「利他的な行動をする」ことがプログラミングされているのです。そういう集団でなければ生き残って来られなかったからです。

 頼ることは、相手に対する最大の信頼の証しであり、お互いのことを知り合うきっかけづくりにもなります。頼ることで相手の自己効力感が向上し、健康状態も向上するのですから、頼ることをポジティブに捉えたいものです。

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