【個別・協働・探究で学校が変わる(7)】「時間ベース」から「到達ベース」への転換

【個別・協働・探究で学校が変わる(7)】「時間ベース」から「到達ベース」への転換
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 工業時代の学校で子どもたちは、学んでいる単元を理解したかどうかではなく、決められた時間がたったかどうかで次の単元に進まされている。いわゆる「時間ベース(履修主義)」による管理だ。それぞれの教科で年間の「標準時数」というものが定められ、単元ごとに標準的な時数が決められていることが多い。

 そのような仕組みの下では、今学んでいる内容が分からないまま次の単元に進まされたり、とっくに理解しているにもかかわらずクラスの他の子どもたちが追い付くまで待たされたりするような状況が生まれがちである。果たして「時間ベース」は子どもの発達にとって最適な方法なのだろうか。

 私は算数科の授業改善に取り組み始めた。それは「時間ベース」から「到達ベース(修得主義)」への転換だ。従来のように1時間ごとに授業が完結するのではなく、単元全体で学習が完結するという考え方で、「単元内自由進度学習」と呼ばれている。自由進度学習では、単元の学習の最初に学習計画表を配布し、学習についての見通しを持ち、自分で学習計画を立てながら学びを進めていく。子どもたちは自由進度学習を通して、学習に対する主体性がより強くなり、自分の学習に自らが責任を持つようになっていった。

 自由進度学習では、毎時間の目当てや課題は事前に可視化しておき、児童はそれを基に自分のペースで学んでいくことになる。その時間の内容が分からなかったり苦手だったりする場合は、時間をかけて学ぶことができる。反対に、理解が進めばどんどん先に進むこともできる。友達と一緒に学び合うことも、個人で集中して学ぶことも選択できる。

 この学習において、私はそれぞれの時間の学習内容のポイントを動画で作成し、いつでもアクセス可能な環境を整えた。それにより、自分が理解するまで何度でも学び直すことができるようになった。

 しばらくすると、全員の算数の通知表がオールAになることもしばしば起こり始めた。一定の時間で切って到達できた子をAと評価し、到達できなかった子をCと評価する思考は工業時代の思考そのものである。

 学習のペースについて、「分かるまでじっくり学び続けると時数が足りなくなったり、学習内容が期限までに終了しなかったりするのではないか」という質問を受けることがあるが、実際には教科書に例示された期間よりも大幅に速いペースで学習が進むことがほとんどだ。3年生の時には12月~1月には算数の学習内容を全員が終了し、残りの期間は全単元の復習に充てることができるようにもなった。

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