学習指導要領に示されているように、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を目指した授業改善はわれわれ教師に課せられた使命である。また、文科省は2018年6月5日に「Society5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」を提言した。その中に「Society5.0における学校は、一斉一律の授業スタイルの限界から抜け出し、読解力等の基盤的学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場となることが可能となる」と書かれてある。
私は学級において「一斉一律の授業スタイル」から「学び合う授業スタイル」への授業改善を目指した。
ここでは、算数科における授業改善の例を紹介する。
①単元の「狙い」と単元で「身に付ける力」を子どもたちと共有
②1時間ごとの達成目標を確認(例:〇〇を理解し、△△ができるようになる)
③子どもがつまずきそうな部分や理解の足場が必要な部分の教材や教具を準備
④教材や教具などを子どもが自ら使いこなせるようにレクチャー
⑤授業中の「立ち歩き」や「会話」など、学び合いを推奨
⑥時間ごとに確認テストを用意し、完璧な習得を課題とする
⑦単元テストで合格点を取ることを全員の課題とする
初めてこのスタイルへの転換を行った単元で、驚くような結果が出た。単元テストの平均点が90点を超え、最低点も70点台になったのだ。この結果は、今までの単元テストの結果を大きく上回るものであった。
しかし、私が驚いたのはテストの結果よりも子どもたちの変容である。それまで受け身だった一部の子どもたちの学習態度が、主体的なものへと大きく変化したのだ。特に、場面緘黙(ばめんかんもく)の女の子がおとなしい男の子とヒソヒソ声で学び合い、小さな声で「分かったかも」と声を発する場面を見た時は、思わず目頭が熱くなった。
このスタイルへの転換は、教師にとって多くの学びをもたらしてくれた。私にとって一番の学びは、「子どもは有能であり、自ら学び、自ら伸ばし合っていくことができる」「学び合うことで子どもたちの関係性は非常に豊かになり、驚くような成長を見せてくれる」ということを心から実感できたことだ。
大切なことは、最大の教育環境である教師自身が「子どもたちが自立した学習者として育っていくこと」「子どもたちの無限の可能性」を信じていることである。それがなければ、学び合うスタイルの学習は「単なる放任」や「形式的な学び合い」へと堕してしまい、「深い学び」を実現することは不可能となってしまうだろう。