私が小学校や中学校から「受援力」をテーマに講話を依頼される際は、たいてい企画の裏に「自殺予防対策や命の大切さを教える」という趣旨があります。子どもたちに対し、悩みを一人で抱え込まず早めに話してほしい、友達や先生たちだけでなく今は電話やチャットの相談窓口もあるし、ゲームの中に逃げ込んでもいいから、とにかく誰かとつながってほしい、命を絶ってほしくない、そんな現場の先生方の切実な思いが伝わってきます。
とはいえ、実際にSOSを出すのはとても勇気が要ることです。自分の弱みをさらけ出し、困っている状況を伝えることは、時として情けなく弱い自分を認識することにもなります。しかし、そのリスクを冒してでも相談するという行為は、相手に対する信頼の証しであり、周囲の思いやりや優しさを引き出すWin-Winの行動です。加えて、お互いのことを深く知るきっかけにもなります。
自己肯定感が下がっている子どもほど「頼る」ことへの抵抗感が強いので、「あなたは、助けられていい存在だ」「大切な存在だ」と日々伝えていくことが、子どもたちの自尊感情を底上げすることにつながります。
これから社会に出ていく人たちに、われわれができる贈り物の一つは、最初から「Plan B」を用意しておくよう教えてあげることです。それはすなわち「断られた場合の対応を織り込み済みで頼ってみる」というアイデアを伝えることです。私自身もこれまでの人生の中で、必死になって頼んでも、周囲に助けを求めても、なかなか支援にたどり着けないことがありました。ただ、それを自分に対する拒絶、批判や個人攻撃と感じるとますます孤立し、殻に閉じこもってしまいます。精いっぱい頼んでも期待するような答えが得られなかったときは、それを自分の「失敗」ではなく自分の「学び」と捉え、軌道修正の材料とし、改善するために活用するのです。
例えば、こちらが頼んだ時にできないと言われた場合は、「何があったらできる?」「いつならやってもらえそう?」と前向きに再び聞いてみます。ぞんざいに断られて「もう二度と頼まない!」と思ったときも、「言いにくいことを伝えてくれてありがとう」「断るのも勇気がいると思う。いいよ、また今度、頼むよ」と感謝の気持ちを伝えることで、いつかどこかでご縁がつながるようになります。