ここまで10回の連載で、学校の先生方や子どもたちが持つべきライフスキルとしての「受援力」について紹介してきました。なぜ、学びの場で「相談するスキル」が必要なのでしょうか。それは学びの場にこそ、お互いに頼り合うという行為が不可欠だからです。
一人での学びには限界があります。大切なのは、複数の視点や複数の立場で学んだことに横串を刺し、お互いに学び合い、教え合うことです。その際、自分から人の話を聞くなどすると、学びが広く、深くなります。子どもたちが社会人になって一人では解決できない困難に直面したとき、誰かとつながれるように、教員の皆さんにはぜひ、「頼り上手」「相談上手」の手本になっていただきたいのです。
教員は、担当する学級や教科があり、人に聞けない、頼れないという状況に陥りやすい職種です。同僚の忙しさや大変さを知っているだけに、責任感や使命感の強い人ほど他人に相談できないという声も聞きます。でも、先生方が疲弊して悩みを一人で抱え込んでしまうと、心の余裕を失い、子どもへの愛情も枯渇してしまいます。
皆が弱音を吐けるような心理的安全性を築くにはどうしたらよいのか、以下に典型例を挙げ、皆さんができることをまとめました。
遠慮する同僚には、「私の勉強になりますので、一緒にやりませんか?」などと声を掛けると、相手も頼りやすくなるようです。
人に頼らず何事も自分でやってきた人は他人が頼ることに対しても不寛容で、冷たい対応をしてしまいます。そうした人には、逆に頼り上手は助け上手だと話すと、心のハードルが下がるようです。
他人に相談することは恥ずかしい、と思ってしまう人がいます。「何か手伝えることは?」と声を掛けても「大丈夫」と返答するわりに「自分だけ忙しい」と愚痴る人は職場にいないでしょうか。そうした人には、今の仕事の中で何に一番足を取られるのか、どのタスクが意外に時間がかかるのか、どのステップが律速段階なのかを聞くと、その人が手を焼いて負担に感じている作業を口に出しやすくなるかもしれません。
読者の先生方が率先して受援力を発揮することで、「頼ってもいいんだ」という受援力マインドが職員室に広がり、居心地の良い雰囲気が生まれます。
頼ることはコミュニケーションのきっかけであり、新しいネットワークづくりにもつながります。自分の落ち度であろうがなかろうが、困ったときは助けを求めていい――このメッセージを教員の皆さんから、社会へ巣立つ子どもたちに伝えていただきたいと思います。
(おわり)