本連載ではこれまで、学校現場における「従順であること」から「主体的であること」、「標準化」から「個別化」、「時間ベース」から「到達ベース」、「競争」から「協働」への転換、そして「探究的な学び」を中心に据えた授業改善の例を紹介してきた。それらの授業改善は子どもたちの「内発的動機付け」を飛躍的に高め、学習は自分事になり、子どもたちは日を追うごとに自立した学び手へと変容していった。
子どもたちの変容は、それまで授業改善に対して保守的であった教職員にも変化を促し始めた。今までの伝統的な教育方法を見直し、「教える人(ティーチャー)」から「学びを促進する人(ファシリテーター)」へと変化し始めたのだ。
画一的な一斉指導から、子どもたち主体の「協働学習」や「探究学習」が学びの中心となったことで、教師が一人で抱え込んできた仕事は、次第に子どもたちに委ねられていくことになった。その結果、それまで授業準備に使っていた時間は半減し、教師は子どもたち一人一人に寄り添った教育(個別最適化された教育)に注力できるようになっていった。
一方、教室と同様に職員室においても「主体性」「個別化」「到達ベース」「協働」「探究」などの思考が重視されるようになった。教室における授業改善が教職員のマインドセットの転換につながり、仕事に対する「内発的動機付け」が高まっていった。
校務のプロジェクト化や学校行事の見直しが日常的に行われるようになり、職員室の協働化が促進された。今まで疑問を持たずに踏襲してきた伝統的な学校文化を「何のため」という視点でイチから問い直し、探究的に「新しい学校づくり」に取り組むことで、教師たちは形骸化していた多くの仕事から解放されていった。何よりも、教師自身がワクワクしながら主体的・探究的に働く姿は、子どもや保護者の大きな信頼へとつながっていった。
昨今、学校のブラック化が問題となり「働き方改革」を求める声は年々強くなっている。国や教育委員会がさまざまな改革を打ち出してはいるが、改革は遅々として進んでいないように見える。教員志望者は減少を続けており、今年度の小学校教員の競争率(採用倍率)は2.5倍と、過去最低を更新した。
今求められているのは、教育現場が元気を取り戻すための抜本的な「改革」である。私は伝統的な学び方を問い直す「授業改善」こそが、「働き方改革」の本丸であると確信している。
(おわり)