「無理しなくていいよ」
「具合が悪かったら休んでね。年休は権利だからね」
そう言っていただけて、本当にありがたい。でも、ただでさえ学校現場は人がいない状況。今日、もし私が休んだとしたら、誰が入れるかな…。そもそも、誰かに入ってもらうことが申し訳ない。休んだとしても、授業が進まないから、休んだ後がつらいだけ。休んだ次の日は、その日にやってもらったプリントの丸付けをして、教室の整理をした上でいつもの準備をしなくちゃいけないなぁ…。ああ、休んでいる日にトラブルが起きたらどうしよう。まず、自習計画を作ることがしんどい。今日は図書室使えるのかな。テストはやれるものあったかな。それ以外の時間に子どもたちでできることは…。
こうして考えれば考えるほど休むことがつらくなって、結局、「休まない」という選択をする。そんなことが、私にはよくある。皆さんも、そうではないだろうか。だけどそんなとき、私は先輩の先生から言われたすごくうれしかった言葉を思い出すようにしている。
「あなたと一緒だから私は安心して休める。だからあなたも何かあったとき、安心して休んでね」
この言葉を聞いた時、先輩は私のことを信頼してくれていると思ったし、先輩も安心して休んでほしいと思った。でも、その当時の私は、まだまだ頼りない若手。もっとバリバリと休まずに働く先輩と一緒に組んでいた方が、よほど安心して休めたと思う。それでも、そう言ってくれた先輩は、きっと、私を安心させようとしてくれたんだと思う。私が同じ状況になったら、同じことが言えるだろうか。
自分が苦しい状況のとき、隣にいる大切な同僚が休むこともきっとあるだろう。そんなときに、大切な同僚が安心して休めるような自分でいたい。そして、大切な同僚を信じてしっかり休める、そんな自分でいたい。
同僚が安心して休めるためにできることは、小さなことだとしても、きっとたくさんある。自習計画を勝手に立てて、「これでオッケーですか?」と、同僚が確認するだけにしたら楽かもしれない。プリントの丸付けも、代わりにやっておこう。テストだって丸付けして転記するくらい、すぐにできる。トラブルだって、その時にいた先生でなんとかして、担任の先生に後で報告すればいいことだ。そういう小さいことを、少しずつ引き受けていけばいいんだと思う。
「休んだ分を取り返すのは、全部担任」という考え方じゃなくていい。そうやって私は同僚が安心して休める状態をできる限りつくっていきたい。そして、職場がそういう状態になれば、私も安心して休めるなと思う。
【プロフィール】
ゆきこ先生(ゆきこせんせい)公立小学校教員。「しんどい先生の心が少しでも軽くなってほしい。一人ではないと伝えたい。」という思いのもと、InstagramやVoicyなどのSNSで発信をしている。2023年2月に初の単著『学校がしんどい先生たちへ それでも教員をあきらめたくない私の心を守る働き方』(KADOKAWA)を出版。キッズコーチング®︎マスターアドバイザー。TCSコーチングスキルアドバイザー。