前回までは、OECD(経済協力開発機構)によるウェルビーイング概念と指標群、指標結果の一つであるBetter Life Index(BLI)の日本の結果について見てきました。今回は教育について取り上げます。
BLIの教育領域における日本の成果は、他の領域と比べると高いと言えます。BLIが設定する10段階評価についての2022年の結果(公開最新版)は、住居6.1、収入3.6、雇用8.3、コミュニティー5.5、教育7.7、環境6.7、市民の関与2.0、健康5.3、生活満足度4.1、安全8.4、ワークライフバランス3.4でした。この「7.7」という教育の結果は、「教育年数」「生徒の学力」「教育達成」によって出されます。
「教育年数」は、18年間学校教育を受けることが「期待されている」かどうかを見るために、5歳~39歳までの在籍年数の平均から示されます。18年間の内訳としては高等教育4~6年、中等教育6年、初等教育6年、幼児教育2年などが想定されます。日本の数値は16.4年で41カ国中34位です。1位はオーストラリアの20.4年、最下位はコロンビアの14.0年でした。
「生徒の学力」はPISA調査の結果です。PISA調査とはOECDが3年に一度行っている15歳児を対象とする学力・学習状況の抽出調査です。問題の質や抽出者などは統計的に管理されています。日本の得点は520点で、41カ国中韓国と同点で3位です。1位はエストニア526点、最下位はコロンビアの406点でした。OECD平均は488点です。BLIのレポートでは、「成果の高い教育制度」である国は、全ての生徒に質の高い教育を提供しているとして、日本のほか、カナダ、エストニア、フィンランド、アイルランドなどをその例として挙げています。日本のPISA結果と家庭の経済状況は1.15(1.0で差異なし)、ジェンダーにおいても1.0と、公正な高い教育成果を上げています。
「教育達成」は、25歳から64歳人口の後期中等教育修了者の割合によって出されます。日本では高校卒業ということになります。日本は95%で、41カ国中2位です。
これらの結果からすると、わが国の教育はPISA調査に現れる義務教育の質の高さの一方で、制度的な保障による学びにおいて課題があるということになります。OECDが一般的とする18年間の学校教育について、日本の場合は無償の義務教育がわずか9年で、その前後の学校段階の授業料は政治的な判断による補助が行われているだけです。
教師においても、学び続けなければ高度専門職としての内実を維持できません。教師の学びとしての大学院教育がもっと一般的になるべきことも、国際標準から示唆されます。