本連載もいよいよ最終回となりました。前回お伝えしたように、公正という社会的価値の実現において、教育の成果を分析・開発・波及、そして分析へと連鎖するような、教師による研究とはどのようなのものか、実例を見てみましょう。 「社会に開かれた研究」は、子どもの成長を模索する教師たちの協働を促すものでなければなりません。
前回は、学校を快適な空間にするために、学校の活動と成果をより開かれたものとし(①)、風通しが良く、効率的・効果的に成果を出すことができる職場(②)が目指されることとし、②についての手掛かりとして2つのリーダーシップを提示しました。今回は①を実現するための方策を考えます。有力なものとして、教師による研究を社会的資本(ソーシャル・キャピタル)と位置付け、「社会に開かれた研究」としていくことがあると考えます。
前回は物理的な環境について見ました。「子どもたちと教師が安全にもとる施設で過ごしてよいのか」という国民的認識を高めるためにも、学校の活動と成果をより開かれたものとし、風通しが良く、効率的・効果的に成果を出すことができる職場であるべきだと考えます。皆さんの職場はいかがでしょうか。ガバナンスの名の下に、上意下達の意思決定が行われ、教育活動の質を落とす非効率的な状態になっていないでしょうか。
予測不可能な時代となっている今日、学校と教員に対する社会からの期待はますます大きくなっています。本連載ではこれまで、OECD(経済協力開発機構)諸国と比べて日本のウェルビーイングの「のびしろ」は大きい=課題は多い、ということを見てきました。人的資本はもちろんのこと、社会的資本の形成にも大きな役割を果たす学校は、子どもや教師、そして社会全体においても、ウェルビーイング伸長の要です。
本連載ではこれまで、ウェルビーイング推進の提案がOECD(経済協力開発機構)発でなされ、それらは社会全体だけでなく私たち一人一人にも、指標群の数値を手掛かりに操縦管を握り、より良い未来に向けて進んでいくことが期待されていることを見てきました。それらの指標群には客観的な指標だけでなく主観的な指標も採用されており、二軸を包含する球体とその内部で直交する二軸としてイメージできるのではないかと思います(図1)。
今回は、ウェルビーイングという国際的課題に対する日本の動きとして、政府による取り組みなどを見てみましょう。 これまで述べてきたように、OECD(経済協力開発機構)によるウェルビーイング提案は2011年のことでした。日本の政府による主な動きとしては、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(21年6月18日閣議決定)において、効果的な政策形成のために「政府の各種の基本計画等について、Well-beingに関するKPIを設定する」(同方針p.37)と示されたことが挙げられます。
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