【教職員のウェルビーイングを問う(7)】ウェルビーイング伸長の起点として~学校は快適な空間か

【教職員のウェルビーイングを問う(7)】ウェルビーイング伸長の起点として~学校は快適な空間か
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 予測不可能な時代となっている今日、学校と教員に対する社会からの期待はますます大きくなっています。本連載ではこれまで、OECD(経済協力開発機構)諸国と比べて日本のウェルビーイングの「のびしろ」は大きい=課題は多い、ということを見てきました。人的資本はもちろんのこと、社会的資本の形成にも大きな役割を果たす学校は、子どもや教師、そして社会全体においても、ウェルビーイング伸長の要です。期待に応えるためにも、学校は子どもと教師にとって快適な空間でなければなりません。快適さにはさまざまなレベルや視点がありますが、まずは物理的な課題を改めて指摘しておきたいと思います。

 皆さんがお住まいの地域の公立学校は、どのような外観、あるいは内部でしょうか。私はしばしば、「ここは昭和博物館?」と心の中でつぶやいてしまうことがあります。以下に示す文科省の調査結果(一部)を見ると、この感覚はそう大げさではないと思います。

①公立小中学校施設の老朽化面積(築45年以上の改修を要する面積)は、1834万平方㍍(2016年度)から3348万平方㍍(21年度)に増加

②安全面の不具合発生件数は2万2039件(21年度)

(以上、「公立学校施設の老朽化状況調査及び耐震改修状況フォローアップ調査」(21年度))」

③公立学校施設の洋便器率は、小中学校57.0%、幼稚園75.8%、特別支援学校79.4%

(「公立学校施設のトイレの状況について(20年9月1日現在)」

④公立小中学校・高校には、建築物の専門的な測定値「耐久度」から判断される「危険面積」「要改築面積」が存在している(表1)

(「公立学校施設実態調査令和4(22)年度 必要・保有・整備資格・危険・要改築面積(学校種別・建物区分別)、調査注:危険面積・要改築面積には非木造も含む。危険面積は耐力度点数が非木造4500点以下,木造5500点以下の面積とする)

表1 公立学校施設の必要・保有・危険・要改築面積出典:「公立学校施設実態調査令和4(2022)年度 必要・保有・整備資格・危険・要改築面積(学校種別・建物区分別)」

 「老朽化状況調査」においては、耐震化が進んでいないことについて、各自治体による自由記述の欄には「他の事業を優先せざるを得ない」「学校数が多く事業の平準化を進めてきたため」「専門業者が確保できなかった」「財源調整のため」といった事由が並んでいます。教育委員会も悲鳴を上げているのです。

 このように、日本の子どもたちと教師は、安全性、衛生保持に問題のある施設で1日を過ごしています。さらに教師たちは、建物の不備を予算措置なしで補わねばなりません。かつて大きな社会的課題であった「高校全入」は建物整備とともに80年代終わりに解決を見ました。今日においては「安全な学校全入」を強力に進めるべきであり、それは内需拡大になるほどの規模ではないでしょうか。

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