【教職員のウェルビーイングを問う(9)】社会的資本としての「社会に開かれた研究」

【教職員のウェルビーイングを問う(9)】社会的資本としての「社会に開かれた研究」
【協賛企画】
広 告

 前回は、学校を快適な空間にするために、学校の活動と成果をより開かれたものとし(①)、風通しが良く、効率的・効果的に成果を出すことができる職場(②)が目指されることとし、②についての手掛かりとして2つのリーダーシップを提示しました。今回は①を実現するための方策を考えます。有力なものとして、教師による研究を社会的資本(ソーシャル・キャピタル)と位置付け、「社会に開かれた研究」としていくことがあると考えます。

 OECD(経済協力開発機構)は、社会的資本とは「人々の中の協働を促進する、社会的規範、共有された価値、制度的な対応等」であると説明しています。教師たちによる研究により、教師と教師でない人が価値を共有し、協働していくことになれば、教師のウェルビーイングは高まることになります。

 臨時教育審議会最終答申(1987)に提示された「開かれた学校づくり」は、土日の施設開放に始まり、その後は総合的な学習の時間の導入によるゲストスピーカーを活用した「授業」、コミュニティ・スクール制度の導入による「学校の経営」、近年では「社会に開かれた教育課程」という流れで、社会に開かれるようになりました。つまり、施設→授業→経営→教育の過程といった形で、「開かれた学校づくり」は広さと深さを増してきたわけです。次に期待されるのが、教師の研究としての「教育の成果」です。

 教師たちが教育の成果を研究し、成果の質を高めていくにあたり、現在は勤務時間の中で研究活動を行うことが困難です。研究は授業の準備と重なる部分もありますが、そうでない部分もあります。教育の成果についての研究には、分析・開発・波及、そして分析という、広がりを持つ連鎖となるような質であることが求められます。本来は、教員免許更新制の廃止とともに、研究時間の確保についての政策的検討がなされて然るべきでした。画一的な確保が一足飛びであるとしても、大学院などでの学修支援がもっと拡充されるべきであると思います。OECDが想定する「教育年数18年」という世界基準から見て、日本がOECD加盟国の中で下位群に属することは、本連載の第3回で紹介した通りです。

 協働を促進する社会的規範としては、全ての子どもの成長という公正の視点があると思います。不利な状態にある子どもにより手厚い支援を行うためには、実態に基づく根拠と効果測定が欠かせません。また、不利な状態にある子どもはそうでない子どもと分離した世界に生きているわけでありません。全体的な質を向上する中で、それぞれの文脈の中の子どもたち全員の意欲を高め、自律的な学びを促す集団をつくっていくことが必要です。そんなことができるのか、次回具体例とともに考えましょう。

広 告
広 告