今回は「居場所づくりにおいて大切な視点」というテーマで、LFAの居場所づくりの理念や視点について紹介したい。Learning for All(以下、LFA)では、特に困難を抱える子どもたちに向けた居場所を運営しているが、今回紹介する理念や視点はそういったターゲット型の居場所にとどまらず、全ての「子どもの居場所」においても通底するものであると考えている。
子どもの居場所においてLFAが最も大切にしていることは、「子どもが居るだけでいい場所」であると考えている。子どもたちは居場所で何かをすることを強制されない。来てもいいし、来なくてもいい。塾や習い事のように毎回参加し、やるべき行動が決まっている場所でもない。子どもたちがありのままの自分でいることができ、休息したり、遊んだり、自由に行動できる場所である。
そして、居場所とは物理的な場所のことを指すだけではない。大人は物理的な「場所」をつくって満足しがちだが、子どもが過ごす場所や時間、人との関係性の全てが居場所になり得る。そしてもちろん、オンライン空間も子どもの居場所になり得る。児童館や学童施設、塾や困窮世帯の学習支援など、地域にはさまざまな「場所」が存在しているが、「ここが自分の居場所だ」と決めるのは、子どもたち自身だ。子どもにとって、安心安全で「居たい」と思える場所でなければ、そこは子どもの居場所ではない。居場所づくりに取り組む大人は、子どもの声を聴きながら、子どもたちと一緒に安心できる居場所をつくっていく必要がある。
また、子どもの声に耳を傾けることと同時に重要なのは、子どもの権利やウェルビーイング(※)を保障することである。LFAが運営する居場所は、困窮や虐待などの困難を抱える子どもが参加することが多い。ご飯を3食食べることができない子ども、入浴や歯磨きの習慣がない子ども、家に学習環境がない子ども、大きな学習の遅れを抱える子どもなど、多くの権利侵害の中にいる子どもたちを支えている。このように子どもの居場所づくりを通じて、子どもの生存権や学習権の保障をすることもまた重要である。
昨今、子どもの居場所に注目が集まっており、国や行政も子どもの居場所づくりに力を入れ始めた。だからこそ、それらの居場所は「誰のための居場所なのか」ということを問い直したい。大人が一生懸命つくった子どもの居場所は、本当に子どもたちにとっての居場所になり得るのか。そもそも、学校・児童館・学童などの既存の施設は、子どもの居場所になっているのか。子どもの居場所づくりブームの中で、大人が最初に取り組むべきことは、子どもの声を真摯(しんし)に聴くことではないだろうか。
※肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態