今回は「居場所づくりの課題」をテーマに、子どもに多様な居場所を提供していくにあたっての課題を整理したい。前回も紹介した通り、今年4月に発足したこども家庭庁では「こどもの居場所づくりに関する指針」を策定し、子どもの居場所づくりを推進することが目標の一つになっている。しかし、子どもの居場所づくりを推進するにあたっては、いまだ課題も多い。今回は筆者の目線から2つの課題を提起したい。
1つ目は「どのように子どもの声を居場所づくりに反映させるのか」である。子どもの居場所とは、子どもの権利やWell-being(幸せな状態)を保障する場であり、子どもの声を聴き、子ども自身の主体性を尊重してつくられるものである。つまり、大人が考える子どもの居場所ではなく、子ども自身が安心安全な居場所だと感じられる場所をつくる必要があり、そのために大人は子どもの意見や声にこれまで以上に耳を傾ける必要があるのである。しかし、子どもの声を聞くことは難しい。すでに自分の意見を持ち、大人とも対等に会話できる子どもであれば声を聴く場を設定しやすいが、子どもの発達段階や特性を考慮し、声にならない声を継続して聴き続ける工夫が必要であろう。また、貧困や虐待などの困難な状況にいる子どもほど、そうした意見聴取の場にアクセスできていないことも多く、周縁化された(端に追いやられた)声を積極的に拾う工夫も求められる。形式的な子どもの意見聴取にとどまらず、大人側が工夫すべきことはたくさんある。子どもの居場所づくりを広げるにあたって、子どもからどのように意見聴取をするのかはセットで検討すべきであろう。
2つ目は「どのように居場所の担い手を増やし、多様な居場所を確保するのか」である。多様な子どもの居場所を広げるにあたっては、多様な担い手が必要だが、その確保には地域差が出てしまうだろう。人口が多く、地域活動も盛んなエリアであれば、子ども食堂や冒険遊び場などを運営する地域団体も豊富で、多くの担い手がいる。しかしながら、担い手が少ない地域や郡部の中には、そもそも社会資源が少ない地域もある。子どもの居場所に地域差が出過ぎないように、資金や人材確保のサポートを国や自治体が行っていくことも重要である。そして、多様な居場所を確保するためには、多様な担い手が居場所づくりに参画することも重要であろう。NPOや地域活動をする団体・個人のみならず、地元の民間企業など地域に根を張る多くの人々の参画が望まれる。民間の活力を生かしつつ、官公民が連携し、それぞれの良さを生かしながら多様な居場所が生まれるような土壌づくりが求められる。