「令和2年7月豪雨」と名付けられた集中豪雨は、熊本から九州全域、さらには岐阜、長野にも広がり、河川の氾濫、土砂崩れ、多大な人的被害をもたらし、10日以上たった現在でもなお予断を許さない危険な状況にある。それにしても近年、「今まで経験したことのない大雨」による災害が多すぎるのではないか。昨年の東日本台風、一昨年の西日本豪雨、さらには2017年7月の九州北部豪雨など、確実に地球の環境が大きく変化しつつあるようだ。そんな折、福田恆存(つねあり)全集を読んでいて、その中の「自然の教育」という随筆が目にとまった。同氏はこの文章で、自然や歴史、言葉の教育の重要性を指摘しているが、自然については、単に知識のみを教育している今日の科学技術教育を批判し、「自然が直(じか)に子供の教育を施すといふ事実」を見逃さず、自然に教えを乞い、自然から学ぶ姿勢こそ重要である、として、「自然の脅威から守るといふ名目で私たちから自然を遠ざけることに熱中している」対自然の態度から、「自然との付き合い方を自然から学ぶ」態度への転換を求めている。そして、自然も歴史も言葉も、われわれが無視しても文句は言わないが、復讐(ふくしゅう)はする。「この三者の復讐は恐ろしい。が、今日の学校教育、社会教育では、この三者が最もおろそかに扱われている」と結んでいる。この集中豪雨による災害は、その復讐ではないかとも思えるが、60年前に書かれたこの警告に改めて真摯(しんし)に耳を傾け、自然から学ぶ姿勢を持ち続ける必要があるのではなかろうか。