(円卓)コロナ状況下の教育課程

(円卓)コロナ状況下の教育課程
【協賛企画】
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総合初等教育研究所参与 北 俊夫

新型コロナウイルスの感染拡大で、学校は長期間の休業に追い込まれ、6月に入ってようやく再開された。直面した課題が密を避けた教育活動と学習の遅れへの対応だ。学校は本来密接な人間的触れ合いを重視する場。密を避けるのは、学校の役割を一部「凍結」することを意味している。極めて残念な事態だ。大きな声で話したり歌ったりする子供たちの姿が1日も早く見られるのを待ち望んでいる。「今年は、運動会、遠足、修学旅行、文化祭など学校行事を全て中止した。夏休みを短縮し、土曜日にも授業を行う。その結果、授業時数がほぼ確保できる」と、ある教務主任が語っていた。学習の遅れを取り戻すためにさまざまな工夫や努力をすることはとても意義がある。授業時数の確保は重要だが、問題は授業の質だ。活発に発言し合う場や協働して学ぶ姿が見られないのでは「深い学び」など期待できない。子供たちは学校行事の場で一段と成長する。行事を中止するのは簡単だが、形を変えて実施できないものか。子供たちの今の学年は一生に一度。少しでも楽しい思い出が残せるよう知恵を出したい。学校の長期にわたる休業で、子供の体力低下と肥満傾向が課題になっている。東日本大震災に先例がある。密にならない体力向上策を開発したい。友達との協働的な活動やコミュニケーションの不足による、社会性や対人関係に課題のある子供や、いつ感染するか分からないことへの不安感や恐怖心を抱いている子供もいるだろう。一人一人の状況に応じたきめの細かな心のケアが欠かせない。医療従事者や感染者への差別や偏見が問題になっている。道徳科などの授業で、医療従事者への感謝の心を養うとともに、生命と人権尊重の教育を一層重視したい。保護者などから休業による学習の遅れが指摘されると、どうしても学力に目が向きがちだ。教科書のある教科だけに関心が向く。併せて、体力の維持・向上や心の涵養(かんよう)についても、課題を踏まえた創意工夫のある教育活動を展開したい。新型コロナウイルスの感染拡大という状況下において教育課程を再編成するとき、頭と体と心を一体に教育するという、学校教育の役割を忘れないようにしたいものだ。

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