(鉄筆)誰にも邪魔されず、……

(鉄筆)誰にも邪魔されず、……
【協賛企画】
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誰にも邪魔されず、夢中になって物事に没頭する時間、あっという間に時がたち、目いっぱいやり終えたと思える時間、そんな充実した時間のことを「厚みのある時間」と呼び、子供たちにそうした手応えのある時間を持たせ、数多くの豊かな体験をさせたいと述べられたのは河合隼雄さんだった(『新しい教育と文化の探求』創元社)。新型コロナの感染拡大は、子供たちに幾つかの犠牲と我慢を強いたが、夢中になって物事に取り組む、この「厚みのある時間」を少なくしたことも、その一つではないか。従来、じっくりと時間をかけて豊かな体験を可能とするのは、主として夏休みや校外学習であった。しかし、今年は、新型コロナの影響で、多くの学校で、夏休みが短縮され、校外学習も中止となった。しかも、コロナ禍で不安な日々を余儀なくされた。こんな時期に、主体的な「厚みのある時間」を生み出すことは難しい。子供たちが手応えのある時間を通して得た豊かな体験は、子供たちの人間形成に大きな影響をもたらすことは、体験活動に関する多くの調査研究で明らかである。先日、間隔を空けて稲を刈る子供たち、地域の人たちに竹細工を学ぶ子供たち、アクリル板で仕切った図書室で読書に没頭する子供たちの姿をテレビ番組で見た。コロナ禍でも条件を整えさえすれば、子供たちが、主体的に物事に関わり楽しく活動する「厚みのある時間」が持てるのである。そうした条件整備に努力し、子供たちに豊かな時間を保障することが、今、われわれ大人に課せられた大きな責務ではないか。

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