政府は10月27日、2020年版の自殺対策白書を閣議決定し、その内容を公表した。19年度の自殺者数が前年度と比べ減少して10年連続の減少をみせる中、注目されるのは年齢別の自殺者および自殺死亡率で10~19歳の年代が増加し続けているという結果である。この年代は自殺が死因順位の第1位となっている。これらの数字は、先日この稿でも取り上げたユニセフが行った「子どもの幸福度ランキング」における「精神的幸福度」で日本の子供が参加国38カ国中37位という結果にも反映している。この白書の数字は昨年度のものであって、コロナ禍が続く今年度ではさらにその数の増加が予想される。子供の自殺の原因について、かつてはすぐにいじめに結び付ける傾向があったが、最近ではいじめのほか、性格、精神疾患、親との死別や離婚など家庭内の環境の変化によるものなど、多感な年代であるが故の複合的要因によるものと指摘されることが多い。子供の自殺予防に関する指導はやはり学校に期待するところが大きい。14年に文科省が発行した「子供に伝えたい自殺予防~学校における自殺予防教育導入の手引」によれば、「気付く=傾聴し危険性を過小評価しない」「関わる=心配していることを伝える」「つなぐ=心配していることを信頼する大人に話す」――の3点が大切だという。また、指導時に「価値の押し付けを避ける」ことと「グループワークを重視する」ことを推奨している。まさに「主体的・対話的で深い学び」につながる言葉ではないか。