発達障害に関する本というと、当事者に適応行動をさせるために専門家が書いた解説指導書がほとんどだが、本書は発達障害の当事者、関係者の双方が日々を穏やかに暮らすためのポイントをまとめた貴重な本。当事者自身が読んで納得できる点を重視しているのが大きな特徴だ。コミュニケーション、仕事などの場で起きやすい具体的な問題行動とその背景要因、改善方法までがセットでまとめてあるので分かりやすい。
発達障害の傾向がある人は、身の回りのさまざまなものごとを頭の中で処理する際の「情報処理の仕方」が独特で、この独特さが生活上の困難に影響していると考えられている。
この独特の「情報処理の仕方」(ものの見方・考え方)をよく理解することで、さまざまな困難の原因が推測しやすくなり、当事者も周囲も対策が立てやすくなる、と指摘する。
4章構成で各章のテーマは第1章「コミュニケーション」、第2章「感情の理解」、第3章「勉強の仕方」、第4章「仕事の仕方」だ。どの章からでも読み始めることができるように工夫されており、イラストも多数添えてあるので読みやすい。
発達障害の傾向のある子供と接する学校現場の教師、発達障害を持つ当事者で、自身の特性を理解したい人やその家族など、問題と思われる行動を改善するためのヒントを得たい人に手に取ってもらいたい一冊である。