『教室マルトリートメント』(川上康則著、東洋館出版社)を読んだ。著者は公認心理師などの資格をもつ、特別支援学校の現役の教師。
「教室マルトリートメント」は著者の造語で「教室内で行われる指導のうち、体罰やハラスメントのような違法行為として認識されたものではないが、子どもたちの心を傷つけているような『適切でない指導』」を指している。頭ごなしの叱責(しっせき)、威圧的・高圧的な指導だけでなく、褒めるべき時に褒めないことや、子供になめられないように笑顔を見せないことなども含まれる。
さらに子供の発達を阻害するネガティブ要素をもった言葉である「毒語」の例も示されている。「何回言われたら分かるの」というような質問形式で問い詰めるもの、「勝手にすれば」という裏の意図を読ませるもの、「早くしないと○○させないから」という脅しで動かそうとするものなどである。このような言葉によってトラウマになったりフラッシュバックを引き起こしたりすることがあるという。
以前に、この欄で日本スポーツ協会の調査結果を紹介した。運動やスポーツへの意欲はあるものの、実際には月に1日以下しかしない成人の2割は、運動やスポーツで「ものすごく叱られた」「強制的にやらされた」「できないことへの周囲の視線」「体育の授業中に笑われた」などのネガティブな経験をしていた。
この夏休み、「その子のためだ」と信じてやってきた指導について虚心坦懐(たんかい)に振り返り、9月からの指導を考える時間をとることができるとよいのではないかと思う。