質問紙法による性格検査では「虚偽尺度(lie scale)」と言って受検者が意図的に自分をよく見せかけようとすることを検出するための尺度がある。社会的には望ましいがほとんどありえない行為や、反対に望ましくはないがよく見られる行為を設問にする。例えば「私はこれまで風邪をひいたことがない」などである。成人で風邪をひいたことがない人はいないはずだ。これに「Yes」と回答していたら他の設問の回答も疑わしいものになる。
1学期にいくつかの小中学校を訪問し、校長からこの2~3年の間、「思考力、判断力、表現力の育成」を目指して全教職員で授業改善に取り組んでいるという話を聞いた。その成果として学校評価の結果が示されることが多かった。
学校によって表現は若干異なるが、「先生は分かりやすい授業をしている」という趣旨の質問項目で、多数の保護者や児童生徒から「そう思う」の回答を得ているとのことだった。高い評価を得ていることは喜ばしいことだが、保護者や児童生徒は本当に授業をきちんと評価しているのか疑問に感じた。
教師が従来どおりの懇切丁寧な分かりやすい解説をしていて、保護者や児童生徒の評価が高いのであれば理解できる。しかし、授業改善が少しずつでも進んでいるのであれば「分かりやすい授業」ではないはずだ。
教育活動についてきちんと評価してもらい、より良い教育活動に向けて改善するのが学校評価の目的ならば、この夏季休業中に評価項目を見直し、保護者や児童生徒に評価項目について説明する必要がある。