「だるまさんが転んだ」ができない子供が出現している。鬼の子供が「だるまさんが転んだ」と言って振り返ろうとするときに足を止めるが、その動作ができないのである。
足がすぐに動いていてしまう。幼児だけではなく、小学生でも足を止められない子供がいるというのである。
「だるまさんが転んだ」は運動能力の基礎基本を身に付けてないとうまく遊べない。鬼の声を聞いて瞬時に足を動かし、振り向いた瞬間に足を止める。相手の声に反応しながら体のバランスを取る。
この遊びは、これまでは幼児期に鍛えられ、小学生になると上手に遊べるようになっていた。
今や小学生でもうまく遊べない子供が出現している。
もう一つ類似した事例を紹介する。小学生の低学年で駆けっこなどをしていて転んだとき、手をつけることができず、頭から落ちる子供が出現している。たとえ、手をつけたとしても骨折してしまう子供も現れている。
相撲の世界では土俵下に落ちるとき、頭から落ちろ、と指導される。相撲では「手つき」は負けを意味するからである。顔や頭の擦り傷は力士にとっては勲章であるが。
なぜこのような子供たちが見られるようになったのか。一義的には子供たちの遊び体験が減っているからである。よく言われるように子供たちが忙しくなり、三間(サンマ)を失った。一昔前のような遊び仲間と遊び時間と遊び空間を持てなくなったのである。
そのため、子供たちは成長に欠かせない基本動作を身に付けていないのである。この基本動作とは何であるか。山梨大学教育学部の中村和彦教授は、次のような36の基本動作を提案している。それらは大きく3つに分類できそうだ。
体のバランスを保つための事例では、「起きる」「回る」「組む」などの9種類がある。体を動かす動きでは、「歩く」「走る」「跳ねる」などの9種類がある。用具を操作する動きは、「持つ」「支える」「運ぶ」などの18種類がある。
中村教授の提案は、子供の遊び不足を指摘するだけではない。子供の発達に必要な動作はどのようなものであり、どうすれば身に付けられるか、具体的に提示している。
これから必要なのは子供の発達に合わせて、これらの36の動作を具体的に実践化することである。