(鉄筆)水戸の弘道館……

(鉄筆)水戸の弘道館……
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 秋空の下、久しぶりに水戸市の弘道館を訪れた。弘道館は、1841(天保12)年、水戸藩第9代藩主徳川斉昭が藩政改革の一つに人材育成を掲げ「一張一弛」の理念のもとに創設した近世最大規模の藩校である。栃木県足利市の足利学校、岡山県備前市の閑谷学校、大分県日田市の咸宜園とともに近世日本の教育遺産群として日本遺産認定の第1号となった。

 朝の清新な空気の中に凛と構える姿にこれまでとは違う印象を感じた。茨城県立歴史館主任研究員の小圷のり子氏の懇切丁寧かつ研究の深さを実感する説明をいただき、弘道館および水戸の学問、徳川斉昭のイメージが変わった。

 弘道館は単に文武両道の場ではなく、医学や天文、儒教などをも学ぶ、今であれば総合大学と言える教育施設で、塾生は40歳まで学ぶことが可能で生涯学習の場でもあった。斉昭はこうした学問や武道の鍛錬が総合的にできるように広大な敷地を用意し、学び・鍛錬の場を効果的に配置している。建学精神を刻んだ弘道館記碑を作り、複製の木版画を彫り拓本にして各地に発信している。

 尊王攘夷の考え方は、民を一つにまとめて外国に負けない国をつくることが趣旨であった。後に一方向に偏っていく水戸藩士の姿とは違う水戸の学問の姿を学び認識を変えた。

 見学後、水戸市立第二中学校に寄った。玄関を入ると「弘道館記碑」の拓本が目に入った。斉昭の精神、志を受け継ぐ意図だろうか。何か忘れていたものを思い出させてくれた。事実や具体に追われて、内にある大事な志をつなぐことを忘れていたようだ。

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