教職課程の講義で、情報通信技術に関連した内容も教えている。学校現場に1人1台端末が配られたのが大きいのだと思う。教員免許状を取得するには「情報通信技術」の内容を1単位分取得しなければならなくなったのだ。そのためのコア・カリキュラムも文科省から示されている。学生が教育実習に行ったとき困らないように、大学でもクロームブックと電子黒板をそろえることになった。
学校現場ではどうやらクラウド型授業支援システムを導入しているらしい。それならばこのシステムを講義で使ってみたらどうだろう。教育実習で役に立つかもしれない。そう考えた私は小中学校で使っている授業支援システムの研修会に参加してみた。
そこには大勢の小中学校の先生が参加していた。小中学校の先生は熱心で、授業支援システムをかなり使いこなしていた。やはり若い人は飲み込みが早い。それに比べて古株で機械音痴の私はついていくのがやっとだった。
クラウド型授業支援システムのよいところは、子供の回答状況や考えを教師が一覧で見られるところだ。また、子供の意見を一覧で共有できるので、友達の意見を見ながら自分の意見を深掘りすることができる。今まで紙に貼り付けたり板書したりして共有したことが、一瞬で一覧できるので便利だ。
私は大学の講義においてもこの機能を使っている。もちろん教材の提示も簡単になり、教師の手間を省くことができた。しかし、別の一面もある。学生がノートを取らなくなった。パワーポイントで授業しているとなおさらだ。認識を内面深くに染み込ませるには手と体を使うことも必要ではないか。
学校では配られた端末にデジタル教科書を入れることが決まった。2024年度から英語を先行的に実施し、紙と併用しながら順次教科書のデジタル化を進めるという。
今、教育界ではデジタル化が加速している。端末は今や生活に欠かせない道具となっている。この道具を子供の認識の過程にどのように添わせるかが重要だ。平面的(二次元)な表現を三次元的な空間(現実)の中でいかに実感するか。学びは現実空間で獲得した自己の表象を内面深くに染み込ませる作業だからだ。仮想空間と現実空間の往還はSociety5・0の重要なテーマでもある。